「カフェオレ天井落とし」をする都築秀紀さん(左)と憲幸さん=名古屋市中村区
「それではいきます。自称、世界一『高い』カフェオレです」。名古屋市中村区の「喫茶ツヅキ」。客の前で脚立にまたがった店長の両手には二つのポット。同時に注がれたコーヒーとミルクが、約3メートル下に置いたカップで混じり合う。この光景を見ようと、各地から客が訪れるという。
創業70年以上で、現在は3代目の都築秀紀さん(36)が店長を務める。「世界一高いカフェオレ」は店では「カフェオレ天井落とし」と呼ばれ、先代で父親の憲幸さん(68)が始めた。
23歳のとき、東京・銀座の喫茶店でコーヒーとミルクを別々のポットから同時に入れているのを見て、取り入れようと思った。パフォーマンスで高いところから注いだら客に喜ばれたという。徐々に高さを上げ、5段の脚立を使うようになった。「技」は3代目に継承された。秀紀さんは「お客さんが喜んでくれる。高いところから注ぐと空気が入って味がまろやかになり、泡立ちが良い」と話す。
流行の「インスタ映え」も意識して、注いでいる最中に脚立の間から撮影してもらったり、店長が客を撮影したりするサービスもしている。500円(税別)のカフェオレが、多いときで1日で50杯ほどの注文があるという。
テレビ番組に取り上げられたこともあり、その後、北海道や九州からの客もいたという。大阪から出張で来たという20代会社員の女性は「ネットで検索して来た。一つのアミューズメントみたい」と話した。
喫茶ツヅキは、各国から30種類以上のコーヒー豆を仕入れており、「ユニーク珈琲(コーヒー)を日夜研究するコーヒー野郎の店」を掲げる。新しい試みに取り組む一方で、初代から続く「抹茶コーヒー」など伝統メニューも大切にしている。
コーヒーには普及の「波」があるといわれる。2010年代からは豆の種類や産地、焙煎(ばいせん)方法などにこだわる「第3の波(サードウェーブ)」と呼ばれる。秀紀さんは「第4の波(フォースウェーブ)」も近いといわれるが、どんな波が来ても「おいしさの中に楽しさがあることを大切にしたい」と話している。(竹之内直道)