杜聰さん(左から3番目)と、店で働くエイズ孤児のスタッフら。カウンターに自慢のパンが並ぶ=上海市内、冨名腰隆撮影
中国・上海の中心街にあるしゃれた喫茶店。ほかの店と違うのは、コーヒーをいれる従業員やパン職人として働く人の多くが、親をエイズで亡くした孤児であることだ。香港の社会起業家が約15年前から始めたエイズ孤児支援の一環で、貧困と差別に立ち向かい、自立に向けた事業に育ってきた。営利企業にも負けない人気店になりつつある。
高級ブランドショップや百貨店が集まる南京西路の一角に、喫茶店「ビレッジ127」はある。店内で焼くパンは、防腐剤を使わない。フランス産の小麦粉やニュージーランド産の卵黄を使うこだわりようだ。21日に店を訪れてみると、多くの客でにぎわっていた。
パン職人として働く雲南省出身の男性(32)は、小学生の時に両親をエイズで失った。1990年代、中国の農村では貧しさから売血を繰り返したエイズウイルス(HIV)感染者が急増。男性の両親も、注射針の使い回しで感染したとみられる。子供の時の様子を聞くと、男性は「あまり覚えていないし、思い出したくもない」とうつむいた。
パン職人として生きるきっかけは、社会起業家としてエイズ孤児の問題に長年取り組む杜聰さん(49)の支援を受けたことだった。
香港出身の杜さんは米ハーバー…