パラアルペンスキー(座位)の村岡桃佳=竹谷俊之撮影
開会式で、旗手として日本選手団の先頭に立ったのはアルペンスキーの村岡桃佳(21)=早大。かつて障害を理由に引っ込み思案になっていた少女はいま、スポーツを通じて社会を少し変えられたらと思っている。
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あの日のことはよく覚えている。4歳の夏、家の近くのスーパーに出かけた時だった。急に足が重たい感じに襲われた。帰る時には両足が動かない。兄の背におぶわれて帰った。
横断性脊髄(せきずい)炎による下半身まひ。原因は不明だった。この日以来、車いすでの日々が始まった。
もともと、外で遊ぶのが好きだった。でも車いすだと、鬼ごっこをしても友だちは誰も追いかけてこない。「気を使われるんですよね。子ども心に、すごい複雑でした」。部屋にこもるようになった。
人前に出るのが怖い――。そんな気持ちを変えてくれたのが、スポーツだった。陸上から始め、中学でスキーに本格転向。本気で争える環境は楽しかった。
自然と明るさが戻った。学校はずっと健常者と一緒。最初は近寄りがたく思われても、一緒に過ごせばみんな障害を普通に受け入れてくれた。
最近、うれしかったことがある。「職場で車いすの人がいて、自然と助けてあげられたんだ」と友だちに聞かされた。
高い所にある物を取ってくれたり、段差に気づいてくれたり。ちょっとした気遣いができる人は、意外と少ない。「私がいることで、それが社会に広がってくれたら」と思う。
「とりえもない私が、少しでも意味のある発信ができる。それがすごくうれしいんです」。旗手もそんな思いで引き受けた。特に同年代の若者に、大会を通じて何かを感じてほしいと思っている。(高野遼)