小鎚川に流された人形(ひとがた)=11日午前9時43分、岩手県大槌町、葛谷晋吾撮影
東日本大震災から7年となった11日。午前9時40分。岩手県大槌町の小鎚(こづち)川の河原で、県立大槌高校を今月卒業した岩間麗華さん(18)が、20センチほどの人形(ひとがた)の紙を川面に投げ、友人の黒沢亜美さん(17)と手を合わせた。
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行方不明の祖母ミヱさん(当時79)への謝罪だ。大好きだったのに反抗ばかりしていた。震災前日も言い争った。「明日謝ろう」と思っていたが、その機会は永遠に失われた。「取り返しがつかない」。アニメをヒントに人形の紙に謝罪のメッセージを書き、ミヱさんを奪った海に届けようと思いついた。
最初は2013年3月11日。「気を使ってくれてありがとう」。そう書いた人形を流した。それから毎年続けてきた。
「素直に思いを伝えられなかった」との後悔から、高校では仮設住宅の住民同士の縁を、手作りのアクセサリーを贈り合うことで紡いでいく活動に取り組んだ。仏壇のミヱさんに「ほめてくれる?」と問いかけた。
震災ボランティアで町を訪れた美容師にあこがれ、4月から首都圏の美容室で働きながら資格取得をめざして専門学校に通う。「自分のやりたいことをいっぱいやって、自分の道を見つけてください」。小学生の時にミヱさんからかけられた言葉をかみしめる。今年流した人形には「おばあちゃんの言葉を忘れず、頑張っていきます」と書いた。来年は職場の近くにある川に流すつもりだ。(星乃勇介)