宇宙新時代 月へ、再び
月探査の大きなテーマは水資源だ。極域にあるクレーターなど日光が当たらない「永久影」と呼ばれる場所に存在が期待される。
南極に大量の水や氷が存在する可能性を最初に捉えたのは、1994年に打ち上げられた米探査機「クレメンタイン」だ。その後、日本の「かぐや」やインドの「チャンドラヤーン」も月の周りをまわり、クレーター内の地形を調べたり、近赤外線で水や氷の量を推定したりした。だが、それだけでは水の量を正確に見積もることができず、土壌に含まれる水の割合は0・08~20%と推計にばらつきがある。
今後必要なのが、月面での探査だ。各国は、無人の探査車などを使った土の採取を2020年代に計画している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大竹真紀子助教は「月に存在する可能性がある、氷をどう評価するかが、一番の目的」と話す。JAXAは米航空宇宙局(NASA)などの宇宙機関と14年から、国際協力による月面探査の検討を進めている。
例えば、各国で探査エリアを割り振って重複しないように調べたり、電力や通信の確保が難しい場所の探査は後回しにしたりすることなどを検討。得られたデータは各国で共有する案が出ている。
ただ、水資源を含む可能性が高い「有望地」の近くに自国の探査機を着陸させたほうが、価値のあるデータが集めやすい。その後の月探査や開発で有利になるため、探査エリアの割り振りは難航する可能性がある。JAXA宇宙探査イノベーションハブの星野健さんは「検討チームは腹の探り合いの状態。着陸地点を示したリストも出てきていない」と言う。
米国では、将来の月面探査について、科学的な視点だけでなく、民間による活用など、NASA以外の専門家も交えて幅広く検討している。月探査の専門サイトを運営する寺薗淳也・会津大准教授は「日本も、月面着陸の候補地をどこに決めるか、工学や法律など様々な利害関係者を巻き込んだ幅広い議論が必要だろう」と話している。(田中誠士)