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自分の全て批判する「声」が 統合失調症に苦しんだ日々

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統合失調症って、どんな病気?


統合失調症と診断された長女を長期監禁して衰弱死させたとして、両親が逮捕される事件が大阪で起きました。事件の背景に、病気への無知や偏見があったのでないかと考える人が少なくありません。誰にでもなる可能性があり、100人弱に1人が発症する病気です。大学生の時に発症した大阪府の男性(34)に当時の話を聞きました。


大学に入学したのは、2002年の春。「楽しい学生生活」を夢見ていましたが、違ったといいます。


統合失調症の母を10年憎んだ 児童精神科医の女性


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「何とか合格した」という引け目から、授業が難しいと「やっぱりだめだ」と落ち込みました。入学半年後から下宿を始めると、下宿生のグループがすでにできていて、友達もうまくできなかったそうです。


次第に、下宿先に引きこもりがちに。ひどい二日酔いと寝不足が重なったような疲れが一日中続き、歯を磨き、顔を洗うことさえできなくなりました。


同時に、「声」が聞こえるようになりました。性別も年齢も様々な知らない人が数人、一日中、自分のそばに立ち、ささいな行動までずっと見ていて、その全てを批判してきました。


食べようとすると「大学に行ってもいないのに、何を食べているんだ」「何もしていないのに、食うだけ食うな」と嘲笑されます。


どう動いても批判されるため、極力動かないようにしていたといいます。「意識がない、寝ている時が一番幸せでした」


大学2年で、親が異変に気づき、病院にすぐに連れて行かれ、「統合失調症」と診断されました。薬を飲むと、身の回りのことができるようにはなりました。


でも、病気だと認めたくなかった。「認めてしまえば、『精神疾患の人』というレッテルを貼られ、二度と抜け出せないと感じた」。「これからどう生きればいいか」。将来に絶望して自殺を図り、閉鎖病棟に入院しました。


退院後、家の風呂掃除をしたり、診療所のデイケアで同じ立場の人と話をしたり。自分ができることや、社会との接点を、焦らないように一つずつ増やしていきました。幻聴はいつのまにか消えていました。


休学と復学を繰り返しながら大学を卒業。就労支援を受け、今は月1回通院をしながら、大阪のNPOでフルタイムで働いています。男性は「歯を磨いたり、顔を洗ったりすることさえできなかった発症した当時と比べれば、たいていのことは幸せ。病気になったからこそ、人間として本質的なことに気づけた」と話します。


寝屋川の事件で亡くなった女性は同年代です。男性は「ぼくが幸運だったのは、親がいろいろ調べて、ぼくの状態をわかろうとしてくれたこと。発症した子と同じ目線に立ち、理解しようとしてくれる大人が周りにいるかどうかが、大きな違いを生むと思う」と話します。


社会の偏見に悩む家族


統合失調症になった子どもの親は、どんな思いを抱いているのでしょうか。


大阪府精神障害者家族会連合会の木村瑛子副会長(73)は、長女(40)が高校3年で不登校になり、20歳で統合失調症と診断されました。


「育て方が悪かったのでしょうか」。医師に真っ先に聞き、否定されてほっとしたといいます。長女は「誰かがついてくる」などと言って、外出が困難に。独り言を言いながら、家の枕やシーツをカッターで切りました。受診を拒否した時期もありました。


木村さんは、長女の発症後も仕事を続けました。「親が自分の時間を持ち、精神的に安定することが大切だと思う」。家族会に入ると「同じ悩みを持つ人と話せて、気が楽になった。病気への知識も増えた」といいます。長女は今、家族と一緒に外出できるようになっています。


木村さんは「精神疾患への社会の偏見がなければ寝屋川の事件は起きなかったのではないか」と指摘します。同会の相談電話には、偏見の悩みが多くかかってきます。子どもが統合失調症になると「うちの家系には(精神疾患の人は)いない」と義理の親に言われたり、「育て方のせい」と近所に根拠のないうわさをされたり。


同会の男性(78)は、子どもの精神疾患を知った知人に「まわりには言わないでおきます」と言われました。男性は「善意でしょう。でも、その言葉に、『精神疾患は隠すもの』という社会の偏見が見える」と話します。


木村さんは「寝屋川の事件は行き過ぎですが、精神疾患がある家族をまわりに隠し、ひっそりと暮らす家族は今も少なくない。なぜ、そうなのかを考えて欲しい」と話します。



事件の概要


統合失調症と診断された長女(33)に十分な食事を与えずに死なせたなどとして、大阪地検は1月、大阪府寝屋川市に住む両親を監禁と保護責任者遺棄致死の罪で起訴した。起訴状や取材によると、長女は小6で学校を休み始め、中学は通っていない。両親は少なくとも07年から長女を自宅のプレハブの小部屋に監禁したとされる。小部屋は、内側から開けられず、監視カメラが設置されていた。長女は昨年1月ごろから、急激にやせ衰えたが、両親は、小部屋の室温を適切に管理したり、医師に診せたりしないまま、昨年12月に凍死させたとされる。発見時の長女の体重は19キロだった。



寝屋川の事件をきっかけに、統合失調症の取材を始めました。どんな病気なのか、そして発症した人や家族が感じている生きづらさについて、自分自身が無知だったことを痛感しました。今の世の中に、どんな問題があり、今回の事件のような悲劇を再び起こさないために、何が必要なのか。


病気への偏見、支援制度、医療のあり方なども含めてご経験やご意見をお寄せください。(長富由希子)



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