小学1~3年生90人が参加した「センバツ・キッズフェスタ」(18日、阪神甲子園球場=日本高校野球連盟、毎日新聞社、朝日新聞社主催)。「テーマはスマイルでいきましょう」と打ち合わせで提案したのは、報徳学園(兵庫)の永田裕治・前監督だった。
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甲子園での采配を経験している指導者23人が講師役を務めた。やや強面(こわもて)の今治西(愛媛)・大野康哉監督が「任せて下さい」と応じた。ベテランの帝京・前田三夫監督が「スマイルなら得意」と話すと、同じ東京の関東一・米沢貴光監督が「東京で前田先生の笑顔を見たことがありません」と突っ込んで笑わせた。
ライバル関係にある監督たちが当日も野球未経験の児童と触れ合い、笑顔満開の一日となった。横浜の渡辺元智・前監督は「こういう活動をどんどんしていかなければいけない」としみじみと言った。
この「スマイル」を、高校野球の新しいテーマにしようと提案したい。
高校野球は誕生から1世紀以上を経て、曲がり角にさしかかっている。野球をする子どもの数が激減しているのだ。少子化の影響は大きいが、厳しい、堅苦しいといったイメージも無関係ではないだろう。
夏の選手権大会は前身の全国中等学校優勝野球大会が始まった1915(大正4)年から、試合前後のあいさつを義務づけ、礼節やマナーを重視してきた。大切なことだが、その精神に忠実であるあまり、球児の笑顔も控えめになっていったのではないか。
時代は平成に入り、伸びやかな自己表現をする球児が増えてきた。ベンチで笑顔を見せる監督もいる。タイムリー安打を打ったら大いに喜べばいいし、ピンチを切り抜けたら思い切り笑えばいい。
相手や審判委員への敬意さえ忘れなければ、高校生らしく、感情をストレートに出してもらいたい。
その姿を見て、ぼくも、わたしも、と野球をしたいと思う子どもたちがきっと出てくるはずだ。
第90回選抜大会が開幕した。夏の選手権大会は今夏で100回大会を迎える。両記念大会に出場する球児たちのプレーは、次の100年への懸け橋になる。
礼儀正しく、さわやかで格好いい。そんなお兄ちゃんたちの姿を、未来の球児たちに見せてあげよう。(編集委員・安藤嘉浩)