新たに不正について会見で謝罪する商工中金の菊地慶幸副社長(左から2人目)ら=26日午後、東京都内
大規模な不正融資問題を起こした政府系金融の商工組合中央金庫(商工中金)は26日、国の「危機対応業務」の書類改ざんや統計捏造(ねつぞう)などで新たに577件の不正が発覚したと発表した。昨年10月公表分と合わせて5538件にのぼる。不正に関わった職員を処分し、不正があった統計調査は廃止する。
全職員約4千人の1割を超える553人が不正に関与していた。会見した菊地慶幸副社長は「内部統制やコンプライアンス(法令順守)の意識が不十分だった」と謝罪した。
商工中金はすでに2度の業務改善命令を受けた。国が景気対策のため行う「危機対応業務」の不正が最も多い。書類を改ざんし対象外の企業に国の利子補給で低利で融資した。不正は昨年10月時点の4802件(4609口座)から、今回新たに発覚した23件が加わり、計4825件となった。
貸し出し業務ではほかに、設備資金の不正な融資が昨秋公表の9件から45件増えて54件に、日本銀行の借入制度も利用した中小企業の成長・創業支援向け融資の不正が8件から473件増えて481件だった。
地方自治体の制度融資を悪用した新たな不正も発覚。東京や大阪、熊本など9都府県の制度融資で書類を改ざんして対象外の企業に融資した不正が13件あり、融資額は4億3200万円。
公的統計の「中小企業月次景況観測」で実際に調査せず回答を捏造した案件は23件増え165件に。1976年から続く調査だが、不正を受け廃止する。
引責辞任する安達健祐社長(元経済産業事務次官)に代わり、今月27日付で関根正裕・元プリンスホテル取締役常務執行役員が社長に就く。多数の不正があった危機対応業務は大幅に縮小し、4年後の完全民営化を目指し中小企業支援に特化した体制を作り直す。社外取締役の半数以上は外部から登用する。監督する経済産業省なども第三者委員会で業務を監視する。業務改善計画に沿って運営されているかや、民業圧迫をしていないかをチェックする方針だ。(福山亜希、伊藤舞虹)
商工中金の融資などでの不正件数(昨年10月公表、今回新たに公表の順)
危機対応業務 4802件(4609口座)、23件
公的制度利用の設備資金融資 9件、45件
成長分野への融資制度 8件、473件
地方自治体の制度融資など なし、13件
統計調査でのデータ捏造(ねつぞう) 142件、23件
合計 4961件、577件
総計 5538件
※1口座で複数の不正があるケースがあり、口座数より不正件数が多い