「不当決定」の旗を出す支援者=2018年3月30日午後3時4分、大阪市北区、井手さゆり撮影
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、大阪地裁(森純子裁判長)は30日、運転差し止めを求めた住民の仮処分申請を却下した。北朝鮮が高浜原発をミサイル攻撃する具体的危険があるとはいえないと判断した。
従来、原発訴訟の最大の争点は地震・津波リスクだったが、住民側は今回、北朝鮮のミサイルが原発を攻撃すれば甚大な被害が出る、と訴えていた。
申し立てたのは、高浜原発から約80キロ離れた大阪府高槻市在住の女性(82)。女性側は、弾道ミサイルなどが飛来した場合に自衛隊に上空での破壊を命じる「破壊措置命令」を政府が常時発令していると主張。実際に全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動し、地下鉄や新幹線も一時運転を停止したことがあるとも指摘。北朝鮮からのミサイル攻撃の危険性は高まっているとして、重大事故で甚大な被害が出た場合、人格権を侵害されると訴えていた。
一方、関電側は、ミサイル攻撃の危険は切迫していないと主張。仮に武力攻撃の危険が迫った場合には、原子力規制委員会が関連法に基づき運転停止を命じるなどとして、却下を求めていた。
高浜原発3、4号機をめぐっては、15年4月、福井地裁が再稼働を禁じる仮処分決定を出した。16年3月、大津地裁も運転差し止めを命じた。その後、抗告審で決定が取り消され、17年5、6月に再稼働した。(大貫聡子、荻原千明)