HaiRiさん=2016年1月
選抜初勝利をあげた創成館(長崎)の選手たちを、音楽で後押しする先輩がいる。この春同校を卒業したシンガー・ソングライターのHaiRi(18)=本名・大口はいり=さん。「堂々と戦ってほしい」。甲子園には駆けつけられなくても、自作の歌が、30日、智弁学園(奈良)と対戦する後輩たちを元気づける。
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《どんなに辛(つら)くたって 手を伸ばす 届くはず
浮いた踵(かかと)を地につけて 走りだそう 位置について》
26日の下関国際(山口)戦。甲子園のスタンドでは創成館の攻撃の際、HaiRiさんが作詞作曲した「スタートライン」が鳴り響いた。軽快なテンポの演奏に生徒も声を合わせた。
長崎市生まれ。演奏や作曲を始めたのは中学のころ。父のギターを弾いたのがきっかけだった。高校2年から音楽事務所に所属し、全国をツアーで回るほか、歌が九州電力のCMに使われるなど、活躍の幅を広げている。
「日記を付けるように、日常のことを曲にする」といい、寮生活をしていた創成館で目にし、感じたことも歌にしてきた。全国レベルの体操部のほか、バレー部や陸上部など、部活を応援する歌を数多く作った。
《終わりを告げるサイレン 鳴り止(や)むことなくまた新しい始まりを告げる》
昨秋の文化祭で披露した「足跡(あしあと)」は、野球部をモデルにした応援歌だ。グラウンドに残る足跡は「確かにその選手がいた」という証し。日がまだ昇らない早朝から素振りをしたり、雪の降る寒い日に走り込んだりする球児の姿が「キラキラしていてうらやましかった」と、思いを込めた。主将の峯圭汰君(3年)は「野球をしている人の気持ちが分かっている。共感できる」。
HaiRiさんはこの春、音楽活動の拠点を東京に移すため、甲子園に応援に行く予定はない。26日の初戦はテレビで観戦し、「すごく刺激を受けた。自分も曲作りを頑張ろう」と思ったという。
「観客一人ひとりの人生に試合が刻まれる。勇気や元気をもらう人がたくさんいる」と、大舞台での後輩たちの活躍を誇らしく思い、大きな「足跡」を残してほしいと願っている。(森本類)