日本航空石川―東海大相模 五回表のピンチでマウンドに集まり、声を出す東海大相模の捕手佐藤(右)=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、遠藤真梨撮影
(1日、選抜高校野球 東海大相模3―1日本航空石川)
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先頭で打席に立つと、相手守備を静かに見渡した。「一塁手が下がっている」。東海大相模の9番佐藤がそう思った時、ベンチからサインが出た。
セーフティーバント。
同点の六回だった。佐藤の50メートル走は6・4秒で、本人いわく、「チームでは真ん中より下」。しかも、右打ちだ。だからこそ、相手の警戒は薄い。「意表を突く作戦はいつものこと。驚きはなかったし、自信もあった」。初球、高めの108キロをプッシュぎみに投手、一塁手、二塁手の間に転がした。
五回が終わって1―1。「ゲームが止まっていた。動かすしかないと思った」と門馬監督。佐藤がバント安打で出ると、続く1番小松の打席では、走者がスタートを切り、打者はバントの構えから打つバスターエンドラン。結果は一ゴロで1死二塁だったが、2番山田が左翼線へ適時二塁打を放ち、決勝点を奪った。
秋の公式戦のチーム打率は3割8分2厘を誇り、本塁打は出場校中2位の計13本。豪快な打撃に目が行きがちだが、7年ぶりの春4強をたぐり寄せたのは、したたかな小技の積み重ねだった。「全ての人間に出塁、進塁、(走者を)かえすことをいつも求めている」と門馬監督は笑う。
佐藤は1年前の冬場、コーチ陣のアドバイスを受け、連日3時間を超えるバントの自主練習をこなした。役割を全うした9番打者は「動いて、つなげば得点できる。改めて実感した。これがうちの野球です」と会心の笑顔だ。
チームのスローガンは「アグレッシブ・ベースボール」。その意味は、決して強打だけではない。(吉永岳央)
今大会初、先頭打者HR
東海大相模は主将小松が一回に先頭打者で本塁打を放った。「最初に相手にダメージをあたえたという意味ではいい打席になった」。普段は感情をあまり出さないが、このときは自然とガッツポーズ。「うれしい感情が出てしまった」と苦笑いした。
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○斎藤(東) 五回二死一、二塁のピンチで登板。ここを抑え、九回まで無失点。「相手はバットが振れていて怖かったが、強気の投球ができた」