解任が発表された浦和の堀孝史監督
見ていて痛々しかった。浦和も、堀監督もだ。
逆転負けを食らった1日の磐田戦。1点を追う後半の追加時間、シュートを打てないどころか、ボールを持つこともできなかった。じり貧の試合内容は悲惨で、同点に追いつこうという気迫が選手からは感じられなかった。
リーグ戦は3敗2分けで、17位と低迷。開幕から5試合勝利なしは、クラブワーストタイ記録だ。堀監督は試合後、「まだ戦いは続く。しっかりと顔を上げて、戦っていきたい」と話した。言葉の額面は前向きながら、その声は小さく弱々しかった。
クラブ幹部は、試合をした静岡から埼玉に戻った1日深夜、堀監督の解任を決めた。淵田敬三社長は言う。「チームの風、流れを変える必要があった」
堀監督は昨年7月、ペトロビッチ氏(現J1札幌監督)の後任としてヘッドコーチから昇格した。2年連続となる監督交代劇。フロントの責任は重い。
だが、解任を発表した2日、クラブ幹部は不振の理由について、「堀監督の責任」に終始した。山道守彦強化本部長は「戦力は整っている。戦力うんぬんではなく、試合の作り方。みんなが疑心暗鬼になっているのが垣間見えていた」と説明した。
今季の開幕前には、横浜マからMFマルティノス、柏からMF武富らとJリーグで実績のある選手を堅実に補強した。今年1月にはブラジル人FWラファエルシルバを中国のクラブに引き抜かれたが、3月にはオーストラリア人MFを獲得し、手当てした。日本代表3人を抱え、Jクラブでの屈指の手厚い戦力をどう生かすのか、は監督の腕次第、というのは間違いないだろう。
浦和の営業収入は66億円(2016年度)と、Jクラブでナンバー1を誇る。台所事情の苦しいクラブとは異なり、監督を選ぶ選択肢も幅広い。そのなかで、Jリーグを開幕から指揮したことがない堀監督にチームの命運を託したのは、現在のフロント陣だ。
山道強化本部長は後任について、「経験のある方にやってもらわないといけない。チームを安定させる材料を持っている方」と話した。監督選びに、一貫性は感じられない。日本人選手からも、外国人の補強について疑問視する声も挙がっている。このまま成績が上向かなければ、チームがバラバラになる可能性も秘める。
日本最大のクラブを誰に託すのか。結果を残せるのか。フロントに3度目の失敗は許されない。(吉田純哉)