「CHAI」のメンバー。右からユナ、カナ、マナ、ユウキ=名古屋市中区、戸村登撮影
「コンプレックスはアート(個性)なり」。女性4人組バンドの「CHAI(チャイ)」は、個性の大切さを歌詞に込めて訴える。ポップで優しいメロディーが人気で、米国デビューも果たした。
メンバーは、双子のマナ(ボーカル・キーボード)とカナ(ボーカル・ギター)、ユウキ(ベース)、ユナ(ドラム)。4人は名古屋市や岐阜県出身で、高校や大学で知り合った。詳しいプロフィルや年齢などは「秘密」だ。
《全部同じ顔なんて変じゃない? キレイキレイしすぎ 個性はどこにある?(中略)そのままがずっと誰よりもかわいい》(作詞ユウキ)
昨年発売されたアルバム「PINK」の代表曲「N.E.O.」。メンバーは「小さい目、低い鼻、くびれのない腰、太い足。自分たちのコンプレックスを歌っている」と言う。
高校時代、マナとカナは学校で座敷わらしのような髪形で顔を隠していたと振り返る。「目立てばいじめられる」と思ったからだ。一方で、「小さい頃からあんまりかわいいと言われなかったから、かわいいと『言われたい欲』がすごくあった」とマナ。休日には、奇抜な髪形と服装で名古屋市中区の大須商店街に出かけた。マナとカナは「あそこなら誰も気にとめない。自分らしくいられた場所」と口をそろえる。
ユウキは「みんな違ってみんないいとか言われるけど全然浸透していない」と日頃から疑問を持っていた。目が大きくて、小顔で、肌も髪もきれい――。世間で「かわいい」と評される、そんな価値観を変えたいと思っていた。
それが「CHAI」の原動力の一つだ。マナは「大きなおなかもアートに見せることができる」。ユウキは「コンプレックスも、見せびらかせるぐらい自慢できるよって気づいて欲しい」と話す。
「ニュー・エキサイト・オンナバンド」(NEO)と自称する。ガールズバンドと呼ばれるのは嫌い。「男女関係なく、対等に音楽をごりごりやりたかった」とドラムのユナ。
そんな4人が出会い、名古屋で活動を始めたのが2015年。昨年は初のアルバムを発売し、国内最大級の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」やファッション誌への登場と活動が広がった。今年は2月に米国でCDが発売され、3月に米国ツアーへ出た。5月には新譜「わがまマニア」を発売する。
「コンプレックスを武器に、完璧じゃない4人が、自信をもってやっていることが、みんなの自信になればいいな」とカナは語る。
夢はグラミー賞と世界3位だ。4人は言う。「1位は時代の『はやり廃り』がある。永遠の3位、ずっと愛される曲を作り続けたい」(斉藤佑介)