選択的夫婦別姓を認めないのは違憲として国を訴えたソフトウェア会社「サイボウズ」(東京)の青野慶久社長(46)は16日、東京地裁であった第1回口頭弁論で意見陳述をした。
サイボウズ社長「使い分けで損失と苦痛」 夫婦別姓訴訟
「じゃあ僕が」妻の姓に変えて分かった経済的不利益
青野社長は結婚時に妻の姓を選んだが、仕事では旧姓の「青野」を使う。陳述では、株式の名義変更で約81万円の費用がかかったことや、飛行機などの予約で戸籍名を使う不便さを説明し、「迅速な企業経営が求められる現代社会で、価値を生まない無駄な活動が発生している」と述べた。
また、精神的苦痛も大きいとし、「両親がくれた名前は、名字とのバランス、意味や画数、響きなどを考慮して生み出された創作物。改姓を強制されるのは、人生を否定されたような苦痛を生む」とした。
口頭弁論後に記者会見した青野社長は「思っていることは伝えられた」と感想を語り、「主張はシンプルで、生まれ持った名前を法的に使い続けたいというだけ。暮らしやすい日本をつくるために動きを大きくしていきたい」と述べた。
原告側は今回の訴訟で戸籍法の改正を提案し、「結婚後も(法的に)旧姓を名乗れる規定を加えればよい」と主張する。ただ夫婦同姓を定めた民法750条が変わらないと、現状は変わらない。この点について青野さんは「戸籍法を第一歩に、民法の議論に進んでいけばいいと思う」と述べた。加えて「日本は一律を重んじてきたが、個性を重んじ、組み合わせることで社会を作っていく時代に入った。別姓も、その選択肢を与える第一歩だと思う」と話した。(北沢拓也)