女子1000メートルで滑走する小平奈緒=白井伸洋撮影
(18日、平昌五輪スピードスケート女子500)
「私のこと笑って見守って」 小平の願い、支えた親友
小平の強さ、自分の体を熟知しているから 清水宏保
世界女王の小平、「氷速女帝」李と決戦へ 女子500
最後の直線。小平奈緒(31)=(相沢病院)が懸命に滑る。ゴールし、タイムを見上げた。36秒94。「その数字をみられたこと、この舞台で出せたことが本当にうれしい」。スピードスケート日本女子初の金メダリストが誕生した。
最初の100メートルを10秒26で通過。一気にスピードに乗って、加速する。「スケートが体の真下にくるいい感触があった」。肩を上げて、重心を下げるフォームをオランダで学び、一歩で氷を押す力は強くなった。最後の400メートルは最速の26秒68。「絶対に500メートルは自信がある、強い。それを示すことができた」
2016年からワールドカップ(W杯)は出場15レース負けなしと無敵を誇る。だが、超えられない壁があった。李相花(イサンファ)(韓)が持つ36秒36の世界記録だ。特に爆発力に勝る李とは最初の100メートルで差をつけられていた。14年ソチ五輪の500メートル2回目は李が小平を0秒20上回っていた。
「とにかく無駄をなくす」。速く滑るために技術やフォームだけではなく、大学時代から小平を指導する結城匡啓(まさひろ)コーチが着目したのは体の使い方や筋肉の動かし方だった。「筋の緩む時間もなくしてきた」と結城コーチは言う。骨や血液の質にまでこだわり抜き「誰も出したことのないタイム」を追い求めてきた。今季W杯では最速の10秒14をマーク。「かなりいい出足でキレも出てきた」と手応えをつかんでいた。
3回目の大舞台。最初の100メートルは李に0秒06差に迫るタイムで通過。磨き上げてきた「しなやかな滑り」で残り400メートルで逆転。「全てが報われた」
1998年長野五輪男子500メートルで金メダルに輝いた清水宏保さんの姿に憧れを抱いた少女は20年後、ついに頂点に立った。自らの目でその景色を眺めた。「実際にみた景色は涙でかすんで、皆さんの顔が見えなかったです」。そう笑って泣いた。(榊原一生)