欧州遠征から帰国した羽田空港で取材に応じる渡部暁斗
「夏にやっていたことは無駄だったのが、分かったということ」。ノルディックスキー複合のワールドカップ(W杯)で、自身初の3連勝を飾った渡部暁斗(北野建設)が30日、欧州遠征から帰国した。取材で好調の要因を問われ、独特の表現で語った。ジャンプの飛び出しで、新しい感覚がつかめたという。
渡部暁は、オーストリアのゼーフェルトで26日から3日間、W杯3試合の総合成績で競う「トリプル」で3連勝を飾った。いずれの試合も前半ジャンプで飛距離を伸ばし、優勝を争う選手にタイム差をつけて後半距離をスタートできたことが勝因だった。「ジャンプは好調。いい感覚で飛べているし、高いレベルで安定してきている」
2週間前にイタリアであったW杯バルディフィエメ大会中に、陸地でジャンプのイメージ練習をしていたときにひらめいたという。「微妙な僕の感覚の差だから、説明はできない。自分がどういうイメージでやっているかということ。もっとこういう感じで飛べばよかったんだ、と」。詳細は語らなかったが、飛び出しの方向がやや高く修正できたのだという。夏に練習していたやり方とは違っていたようだ。
トリプルは、前日のタイム差が反映されるなど独特のルールで、前半ジャンプで飛距離を出すと、後半距離が普段よりもさらに有利になる形式だった。だから、渡部暁も「調子が劇的に向上しているというわけではない」とおごらない。それでも、3連勝でW杯総合首位に立ち、平昌五輪の金メダル候補に躍り出た。
2月3、4日には地元の長野県白馬村で五輪前最後のW杯がある。強豪はW杯総合2位のヤン・シュミット(ノルウェー)ぐらいしか出場予定がないという。「いいレースをして、そこで2勝できればいい」。すでに自己最多タイのシーズン4勝を挙げた。五輪金メダルだけでなく、初のW杯総合優勝まで見据えている。(勝見壮史)