シリアのアサド政権の化学兵器使用疑惑を巡り、米国のヘイリー国連大使が16日にも発表すると予告していた対ロシア制裁について、ホワイトハウスのサンダース報道官は同日、「決定は近い将来になる」として先送りを示唆した。ワシントン・ポスト紙によると、トランプ大統領が制裁を最終承認しなかったという。
サンダース氏は声明で「我々はロシアへの追加制裁を検討中だ」とした上で、記者団に「今は何も発表することはない」と語った。
同紙によると、トランプ氏はヘイリー氏の発言後に安全保障担当の側近と会合。制裁発動にはまだ納得していなかったという。当局者はロシアの今後の行動に対抗する手段として制裁を温存する戦略だとしている。また、制裁計画について政権内に混乱があったとの指摘もある。
ヘイリー氏は15日、米CBSテレビのインタビューで追加制裁について「アサド政権と化学兵器使用に関係する機材を取り扱う企業などに直接及ぶ」と発言。16日にも米財務省が、アサド政権の後ろ盾になっているロシアの企業などに追加制裁を科す方針だと明らかにしていた。
ロシアとの関係改善を掲げるトランプ氏は以前から対ロ制裁には消極的で、共和党や政権内での温度差が目立つ。アサド政権へのミサイル攻撃に加えて、ロシアに直接制裁を科すことでさらに緊張が高まることを避けた可能性もある。(ワシントン=杉山正)