シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑をめぐり、英仏両国の首脳は16日、軍事介入に踏み切った経緯をそれぞれの議会で説明し、理解を求めた。英国では、事前の議会承認を求めなかったことに批判が集中。フランスでは、大量破壊兵器の存在を大義に開戦した2003年のイラク戦争になぞらえる批判に、政府が「今回はイラク戦争とは違う」と反論した。
英国のメイ首相は、化学兵器はアサド政権が使ったと示す「多数の情報」があるとして、攻撃には反体制派が持たない「たる爆弾」やヘリコプターが使われたとみられることなどを挙げた。
議会の事前承認を取らなかったことについては「人道的苦痛を軽減するためスピードが必要だった」と説明した。
軍事行動前に法務長官から攻撃は適法との助言を受けたという。「内戦への介入や政権交代の意図はない」とも語り、目標や手段は限定的だったとした。
野党労働党のコービン党首は議会承認の法制化を主張。攻撃には法的な疑義があり「首相が説明責任を負うのは米大統領ではなくこの議会だ」と皮肉った。メイ氏は3時間以上にわたり議員の質問に答え、正当性を繰り返し主張した。
仏議会では、野党共和党のジャコブ議員が、米英主導のイラク戦争時に仏が反対したことを引き合いに「(今回は)米国と歩調を合わせたことで、仏は中近東で孤立する道を選んでしまった」と指摘。フィリップ首相は「イラク戦争では大量破壊兵器の存在が主張されていたに過ぎないが、今回は化学兵器の存在が証明されている」として、比較は間違いだと反論した。
仏では軍事介入に議会の事前承認は不要だが、3日以内に政府が議会に説明するよう憲法で定めている。(ロンドン=下司佳代子、パリ=疋田多揚)