米国のミサイル巡洋艦「モンテレー」から発射されるミサイル「トマホーク」(米国防総省提供。シリアのアサド政権軍の化学兵器関連施設に向けて放たれた)
シリアでの化学兵器使用疑惑をめぐり、米国と英仏が共同で13日、アサド政権側への攻撃に踏み切った。トランプ米大統領は「攻撃は完璧に遂行された」と成果を誇ったが、アサド政権を支援するロシアとの衝突は望んでおらず、攻撃は限定的なものにとどめた。シリアとロシアは「国際法違反」と批判しており、今回の攻撃によってシリア情勢が好転する兆しはない。
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特集:シリア情勢
48時間以内に軍事攻撃をするか決断する、と語ってから丸4日。トランプ氏はホワイトハウス内の星条旗の前へゆっくり進み、国民に向けて演説を始めた。
「邪悪で卑劣な攻撃で母や父、子どもは苦しみあえいだ。人間の行為ではない、怪物による犯罪だ」。トランプ氏は13日夜、アサド政権が自らの国民に化学兵器を使ったと断言し、激しい言葉で非難した。
トランプ氏はシリアの東グータ地区でアサド政権軍による化学兵器使用の疑いが出ると、「大きな代償を払うことになる」「ミサイル、来るぞ」などと攻撃を示唆。すぐに決断するとも言ったが、12日にマティス国防長官から化学兵器使用の証拠固めを慎重に進めるべきだとの意見が出て、決断がずれ込んでいた。
東グータ地区では14日から化学兵器禁止機関(OPCW)の現地調査が始まる予定だったが、大統領が率先して拳を振り上げただけに、攻撃をやめれば、「弱腰」と批判を浴びる政治的なリスクがあった。
また、6月上旬までの実現を目指す北朝鮮との首脳会談を控え、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長に対し、核・ミサイル開発を続けると大きな代償を払うことを見せつける計算もあった。トランプ政権内では、鼻血を出させる程度の限定的な攻撃で米国の本気度を示し、北朝鮮に核放棄させる「鼻血作戦」が検討されていた。このため行動に移さなければ、北朝鮮との非核化を巡る交渉でも足元を見られるとの見方もあった。
ただ、強気な言葉とは裏腹に、今回の攻撃は抑制的なものだった。
昨年の攻撃で化学兵器を使わないよう警告したにもかかわらず、再び使用疑惑が浮上。昨年の攻撃の約2倍の巡航ミサイルが発射されたが、実際はアサド政権の中枢を攻撃することはなく、化学兵器関連施設にとどまった。
トランプ氏は演説で「シリアが…