国内製薬最大手の武田薬品工業は19日、アイルランドの製薬大手シャイアーに買収提案を行ったと発表した。総額約6・5兆円規模で、実現すれば日本企業による海外企業の買収案件では過去最高額。ただシャイアー経営陣は提案を拒否し、両社は今後も協議する。さらにアイルランドの製薬大手アラガンも19日、シャイアーの買収などを検討していると公表。買収合戦となる可能性が出てきた。
武田は1株あたり46・50ポンドで全株を取得することを提案し、買収資金は現金と武田の新株を組み合わせて支払う形という。その比率は、1株46・50ポンドのうち現金が17・75ポンド相当(米ドルで支払い)、新株が28・75ポンド相当としている。全株を取得すれば、総額は430億ポンド(約6兆5400億円)にのぼる。
同時に声明を出したシャイアーによると、一連の買収交渉で武田による提案は3回目。提案は3月29日から4月13日にかけて行われた。当初は1株あたり44ポンドでの買収を提案し、その後45・50ポンド、46・50ポンドと金額を引き上げたという。
一方、アイルランドの製薬大手アラガンは19日、シャイアーの買収や合併に関して、「検討の初期段階にある」と公表した。「現時点では何も提案はしていない」という。アラガンはシャイアーに提案をするかどうかを5月17日までに公表するという。
シャイアーは、血友病や注意欠陥・多動性障害(ADHD)など希少疾患の治療薬を手がけ、100カ国以上で約40種類の製品を販売している。2017年の売上高は約150億ドル(約1兆6050億円)。武田は18年3月期の売上高を1兆7450億円と見込んでおり、ほぼ同規模の製薬会社。
医薬品業界の調査会社、研ファーマ・ブレーンがまとめた世界の製薬企業の売上高ランキングによると、16年は武田が17位、シャイアーは22位。17年の暫定ランキングではシャイアーが17位で、武田は18位。買収が実現すれば、日本の製薬企業として初めて世界のトップ10に名を連ねそうだ。(野口陽、ロンドン=寺西和男)