人手不足が深刻な警備員を育てるため、警察庁は19日、都道府県の公安委員会による検定内容や合格基準などの見直しを検討することを決めた。1万4千人の警備員が必要とされる2020年東京五輪・パラリンピックまでに、関係する規則の改正を視野に入れている。
五輪の大会組織委員会や全国警備業協会の担当者、大学教授らで組織する有識者検討会が3月末に警備員の検定制度の見直しを求める報告書をまとめた。
報告書によると、警備会社やイベント会社、五輪のボランティアを希望する大学生などを対象にアンケートをした結果、警備員の採用時に知識や技能を学ぶ時間の短縮や中小の警備会社による警備員教育の負担軽減を求める意見が多く寄せられた。
警備員になるには各公安委員会の検定試験を受ける方法と、国家公安委員会に登録された講習機関で講習会の課程を修了する方法がある。検定試験は雑踏や交通誘導など6種類の警備業務に分かれ、それぞれ1級と2級に区分されている。
警察庁は、教育段階で若い世代が受け入れやすいインターネットを使った「eラーニング」の導入や、講習会の増加を検討する。警備員の教育時間数を定めた警備業法の施行規則と、警備員の検定制度に関する国家公安委員会規則を改正する方向で調整し、実務に役立つ知識と能力を身につけられる教育内容を目指す。
警察庁によると、警備業法が施行された1972年に775だった警備業者は、2016年末時点で9434。警備員は約4万人から約54万人まで増加したが、過去5年間は横ばいで推移している。16年度の警備員の有効求人倍率は6・53倍で、全職業の1・10倍を大きく超えた。昨年の警備員1人当たりの月間実労働は164・5時間で、全産業の143・4時間より多かった。(小林太一)