講演会に集まった人たちと交流する五味太郎さん=鈴木暁子撮影
「きんぎょがにげた」「みんなうんち」などの作品で知られる絵本作家の五味太郎さん(72)が21日、ベトナム・ハノイで講演した。五味さんは現地在住の日本人やベトナム人のファンに向けて、「子どもも大人も、好きなものをいっぱい発見することは、人生で一番大事なこと。そのスタートの一つに絵本がなれたらいい」と語った。
五味さんはこれまで約400冊の絵本を出版。作品は約30カ国で翻訳され、ベトナム語にも5作品が翻訳されている。
講演で五味さんは、日本や韓国、中国などで、「教育」のために子どもに本を読ませようとする風潮が強まっていることに違和感を示し、「大人の仕事があるとすれば、いろんなタイプの本を作ってじっくり子どもの選択を待つことだ」と話した。ベトナムについては、「まだ絵本の黎明(れいめい)期で、そこに期待している」と述べ、新しい内容の絵本が生まれることや、普及の仕方への可能性に期待を込めた。
五味さんは絵本を書くのは「自分のため」と述べ、それが結果的に子どもにも大人にも受け入れられてきたと話した。そのうえで、「今度うちへ遊びにいらっしゃい」とか、「暑いから帽子かぶんなさい、と小さな帽子が入っていたりする」という子どもからのファンレターの内容を紹介し、「好きな作品やそれを書いた人に親しみを感じるという感覚、心のやりとりが大事なことなのだと思う」と話した。
また、どうすれば絵本作家になれるのかというベトナム人記者の質問には、「とにかくいっぱい書けることが大前提。膨大な『かく能力』がないといけない」とアドバイスした。
講演会は日本の絵本をベトナム語に翻訳し、低価格で販売する活動を続けている広告・編集会社「MOREプロダクションベトナム」が、日系企業などの支援を受けて開いた。(ハノイ=鈴木暁子)