秋田県内産の山菜を店頭販売する女性ら(昨年10月、千葉県柏市、秋田県提供)
じっちゃんのG、ばっちゃんのBで、名づけて「GBビジネス」――。NPO法人「あきた元気ムラGBビジネス」は、昨秋に誕生した「新米」だ。
お年寄りに活躍の場
地元の山菜を首都圏に共同出荷するなどで地域を活性化しようと、大館、男鹿、横手など秋田県内9市町村の10団体が結成した。これまで県が担ってきた受注・販売業務などを引き継ぎ、来年3月までに県からの「自立」をめざす。
法人の理事長に選ばれた大館市の山田部落会の赤坂実副会長(68)は「職員を雇っていくには売り上げを伸ばす必要がある。参加する集落を増やし、自分たちで販路を開拓していかなくては」と意気込む。
山田地区は2009年から年1回、廃校に並べた軽トラックで山菜などを売る「軽トラ市」を始めた。赤坂さんは「地区を回ると、山菜採りの達人がたくさんいた。そんなお年寄りに活躍の場をつくりたかった」と振り返る。山あいにある地区は、今も若者の流出が止まらない。住民約640人のうち、65歳以上が4割を超える。それでも、活動がメディアに取り上げられ、「自分の地区をほめられることがやる気につながっている」と話す。
山菜やキノコ…首都圏に販路
GBビジネスは、山菜やキノコなどの地域資源を収入に変え、お年寄りの生きがいづくりにつなげるのが目的。県が各集落の資源を調べて参加を募り、11年度から県の事業として始まった。13年度からは首都圏に販路を広げ、今では17団体がネットワークを組む。売り上げは右肩上がりで、全体の売上高は13年度の約330万円から17年度は約1200万円まで増えた。
地域に良い変化ももたらしている。「あきた元気ムラ」に参加した由利本荘市の赤田地域運営協議会の初瀬東一さん(75)は「山菜を持ち寄ることで、住民が顔を合わせる機会が増えた。地域の一体感が出てきた」と手応えを語る。
人口減少に歯止めはかかっていない。赤田地域では10人ほどのメンバーが山菜採りを担うが、「人数が増えない」「若い世代に山菜を食べる習慣がなくなってきた」と今後を懸念する声も聞かれる。
それでも、同協議会の遠藤照夫さん(71)は「活動を子どもたちや地域外の人たちに見せることで興味をもってもらい、人口減少や高齢化の流れを少しでも遅らせたい」と前向きだ。(金井信義)