中東へ向け出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人=時事
安倍晋三首相は29日、中東訪問に向けて、政府専用機で羽田空港を出発した。対立するイスラエル、パレスチナ双方と友好関係を築く日本が「橋渡し役」となり、中東和平の実現を後押しする考えを伝える。パレスチナの経済的自立を支援しようと日本政府が推し進める「平和と繁栄の回廊」構想への協力も要請する。
首相は29日~5月2日、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪れ、首脳会談などを行う。出発前に首相官邸で記者団に「中東の平和と安定に貢献をしていきたい」と語った。
日本外務省によると、トランプ米大統領が昨年12月にエルサレムをイスラエルの首都と宣言して以降、パレスチナとイスラエルの双方を訪問するのは主要国首脳では安倍首相が初めて。首相はパレスチナ、イスラエルそれぞれとの首脳会談で、宣言を真っ正面から批判することは避けつつ、イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を目指すという従来の日本の立場を伝えるとみられる。
「平和と繁栄の回廊」構想は、2006年から日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの4者で取り組んできた。同構想に基づいて整備されたパレスチナのヨルダン川西岸にある農産加工団地では、現地の経済的自立だけでなく、当事者間の信頼醸成につながっているとして、構想をさらに推進する考えを表明する見通し。
ただ、トランプ政権による中東和平の仲介をパレスチナ側が拒否しているなかで、日本が和平交渉でどの程度の役割を果たせるのかは不透明だ。
UAEでは、3月に日本企業が持つ海上油田権益が40年延長されたことを踏まえたエネルギー分野での協力強化などを確認する。(高橋福子)