シファ病院の手術室で患者の手当てをする医師の渥美智晶さん(右)=2018年5月27日、ガザ市、渡辺丘撮影
パレスチナ自治区ガザ地区で、国際NGO「国境なき医師団(MSF)」の日本人2人が緊急医療支援活動を続けている。在イスラエル米大使館のエルサレム移転などに抗議するデモで、イスラエル軍の銃撃により60人以上が死亡し、多数のけが人が出た現場だ。
ガザ市最大のシファ病院の手術室に27日午前、足を撃たれた患者が次々と来た。外科医の渥美智晶さん(42)=長崎県=が看護師と銃創の手術をしたり、感染症を起こさないための処置をしたりしていた。
20日から2週間の予定で1日5件以上の手術にあたる。患者の多くは10~20代の男性。銃弾の入り口の傷は小さく、出口の傷が約10~30センチと大きい。弾丸が破裂して骨が割れるなど重度の銃創が目立つという。
重度の銃創、足を失う危険
「デモの参加者を銃で撃つことは日本ではあり得ない」と言う渥美さんは「主に下半身を狙って撃っているが、傷口が開いて感染症のリスクが非常に高い。足を失う危険もあり、後遺症は深刻だ」と指摘した。
ガザ市内のPFBS病院では、看護師の佐藤真史さん(48)=大阪府=が患者の手当てをしていた。今回が初めての派遣で、期間は5月上旬から約1カ月。「足を撃たれた10歳の男の子が手術中に涙を流して(イスラム教の聖典)コーランを唱え、いたたまれなかった」
67人死亡、3500人超負傷
ガザ保健省によると米大使館が移転した14日以降、抗議デモで67人が死亡、3500人超が負傷した。シファ病院には14日だけで約500人の患者が来た。手術室を6から12に増やし、24時間態勢で治療を続けたが、なお数十人の重傷患者を抱えている。
イスラエルがヨルダン川西岸やガザ地区などを占領した第3次中東戦争開始から51年の6月5日、再び大規模なデモが呼びかけられている。シファ病院のアイマン・サハバニ救急部長は「必要な医薬品の半分ほどしかなく、手術中にも停電が起きるので発電機が不可欠だ。再び多くの死傷者が出て、状況が悪化することを懸念している」と話す。(ガザ=渡辺丘)