イスラエルのネタニヤフ首相は先月30日夜、商都テルアビブの国防省で演説し、イランの核兵器開発計画の「新証拠」を入手したと発表し、「イランはうそをついた」と批判した。核合意を巡ってはトランプ米大統領が、離脱するかどうか12日までに決断するとしており、ネタニヤフ氏は「彼(トランプ氏)が正しいことをすると確信している」と述べた。
ネタニヤフ氏はスライドを使いながら、インテリジェンス(情報収集・分析)活動の結果、数週間前にイランの核兵器開発に関する5万5千ページにおよぶ資料や183枚のCDを得た、と説明。「イランは2015年の核合意後、秘密ファイルを隠す努力を強め、17年には首都テヘラン南部の秘密の場所に移した」と決めつけた。
そのうえで、「核兵器を製造し、実験するプログラムが存在し、いつでも実行できる」と指摘。「イランは核兵器開発計画はないとうそをついた。核合意はうその上に成り立っている」「核合意後も核兵器のノウハウを蓄積し、広げてきた」などと主張した。情報は米国とすでに共有し、独仏などにも専門家を派遣して提供するという。
一方、イランメディアによると、イラン外務省のアラグチ事務次官は30日、「ばかげた子どものショーだ。(ネタニヤフ氏の)主張は15年の核合意締結時に国際原子力機関(IAEA)によって否定されている」と真っ向から反論した。
イランの核合意を巡っては、フランスのマクロン大統領が、弾道ミサイル開発の規制などを加えることを提案。イランのロハニ大統領は29日にマクロン氏との電話会談で提案に応じる可能性を示唆しているが、核合意本体の見直しには応じない姿勢を示している。(エルサレム=渡辺丘、アンマン=杉崎慎弥)
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トランプ大統領は4月30日、ネタニヤフ氏がイラン核兵器開発計画の「新証拠」を明らかにしたことについて、「核合意は米国にとってひどいものだ」と改めて批判した。核合意からの離脱に関しては「どうするかは(今は)言わない。12日かその前に決断する」とした。一方で、「新たな合意の交渉をしないわけではない。どうなるか見てみよう」とし、核合意にとどまる可能性に含みを持たせた。(ワシントン=杉山正)