大浦天主堂(長崎県提供)
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)について、諮問機関が「登録」がふさわしいとの勧告を出した。その内容と評価は――。文化庁が4日未明に記者会見を開き、勧告内容を読み解いた。
長崎・天草、世界文化遺産に登録へ 潜伏キリシタン遺産
「待ちに待っていた。非常に安堵(あんど)しております」。文化庁記念物課の大西啓介課長は冒頭、喜びをあらわにした。「2世紀を超える禁教期に潜伏キリシタンがひそかに信仰を継続した中で育んだ独特の宗教的伝統が証拠として残っていることが評価された」
16世紀に伝来したキリスト教は、江戸幕府により禁じられた。17~19世紀の禁教期、長崎県と熊本・天草地方で伝統的な宗教や社会と共生しながらひそかに信仰を守り続けるなかで生まれた文化的伝統をいまに伝える遺産群で、12の構成資産からなる。
島原・天草一揆の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)や、信仰を集めた平戸の聖地と集落(平戸市)、天草の崎津集落(熊本県天草市)、信仰解禁後に教会が建てられた黒島(長崎県佐世保市)など離島の集落、潜伏キリシタンが宣教師に信仰を告白した大浦天主堂(長崎市)などだ。
文化庁によると、諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は、構成資産すべてに「顕著な普遍的価値がある」とし、指定した範囲も適切、かつ良好な保存状態が維持されていると評価。暴風雨や地震などの自然災害や、過疎化に伴う人口減と高齢化で伝統に関する記憶が失われつつあることへの対策として、日本が保存管理計画を定めて実行している点も認めた。
一方、個別の資産の指定範囲について、一部に指摘があった。原城跡南西部の中学校などがある一部(約2・8ヘクタール)を除くことや、長崎県五島市にある奈留島の江上天主堂から視界に入る、より広い部分を景観保護のためのバッファーゾーン(緩衝地帯)に含めるべきだ、などとした。
登録勧告までの道のりには曲折…