崎津教会周辺に広がる崎津集落=2018年4月30日、熊本県天草市河浦町崎津、朝日新聞社ヘリから、小宮路勝撮影
近世のキリスト教弾圧の中で信仰を継続した潜伏キリシタン。その歴史を示す長崎・熊本両県の12資産が、ユネスコの世界文化遺産に登録される見通しとなった。
長崎・天草、世界文化遺産に登録へ 潜伏キリシタン遺産
12資産のうち、長崎県は11資産を占める。長崎県内外の民間有識者でつくる「禁教期のキリシタン研究会」世話人の柿森和年さん(71)は「長かったような、短かったような……。色んな人に助けていただいて、ここまで来た」と喜ぶ。
長崎市職員として文化財行政に長く携わった経験を生かし、2001年に「長崎の教会群を世界遺産にする会」を立ち上げるなど、20年近く世界遺産登録に尽力してきた。祖父は、長崎県の五島列島・奈留(なる)島の「かくれキリシタン」の役職者。柿森さんは10年ほど前に奈留島に移り住み、本格的な研究や保存活動に取り組んできた。島には、世界遺産の構成資産のひとつ、江上(えがみ)集落(江上天主堂とその周辺)がある。
教会という建物だけでなく、250年にわたって信仰をつないできた信者の歴史にこそ、普遍的な価値があると語る。「世界遺産には、お互いの文化を認め合い、平和な世界をつくろうという考え方が根底にある。弾圧の中でも、暴力に訴えることなく信仰を守ったキリシタンの歴史は世界に誇れるし、大いに発信していくべき価値がある」
一方で、「世界遺産は登録されて終わりではなく、登録されてからがスタート」とも。観光に限らず、勉強会や交流会、お祭りを開くなどして、一般市民も参加できる資産になることが大事だと考える。「主役は市民。色んな分野の人が関わってこそ波及効果が生まれ、世界遺産としての広がりも生まれる」
「黒島の集落」がある長崎県佐…