投票用紙に記入後、読み取り機に入れて1票を投じる有権者=2018年5月12日、バグダッド、高野裕介撮影
イラクで12日、国民議会選挙の投票が行われた。昨年12月の過激派組織「イスラム国」(IS)との3年に及ぶ戦闘の終結宣言後初の総選挙。アバディ首相が率いる「勝利連合」が第1党となる勢いだが過半数には届かない見込みで、選挙結果次第では連立交渉が難航する可能性もある。選挙管理委員会は一両日中に大勢が判明するとしている。
首都バグダッドの投票所では12日朝、軍や警察が警備にあたり、空港では航空機の発着が禁止された。ISは4月、選挙を攻撃対象にすると警告しており、関係は不明だが、中部のディヤラ州では12日、自爆ベルトを身につけライフルを持った男2人が、治安部隊に殺害された。投票所を狙ったとみられている。
バグダッドのタクシー運転手のアマル・ハリドさん(56)は「今までの政治家は何もしなかった。新顔候補に投票した」と語った。アリ・アブドラさん(80)は「アバディ首相を選んだ。戦闘からの復興を急いでほしい」と話した。
選管によると、有権者数は約2400万人。定数は329議席で、比例代表制の18の選挙区に約7千人が立候補している。選挙戦は人口約3700万人のおよそ60%を占めるとされるイスラム教シーア派の主に五つの政党連合が有力で、世論調査では、なかでもアバディ氏の勝利連合が他を大きく引き離している。
バグダッド大学政治学部のハミド・ファデル助教授(42)は「各政党とも政策面で大きな違いはなく、有権者はそれぞれのリーダーを見て投票するだろう」と分析。一方、有権者の現職議員に対する不満が高まっているとしたうえで「投票率が上がれば新顔が当選できる確率は高まるだろう。ただ、大きな変化は起きない」と話した。(バグダッド=高野裕介)