発売が始まった「松陰先生禁断の大福もち」=山口県萩市
幕末の思想家、吉田松陰がもち菓子を好んだことにちなんで開発された「松陰先生禁断の大福もち」が、山口県萩市の道の駅「萩しーまーと」で販売されている。県産もち米を使い、つき方を工夫することで、もち本来の弾力と味が楽しめる。
松陰は1851年、江戸に兵学研究に行った。江戸での出費状況を記録した費用録には「もち 8文」などと、もちを購入した記録が散見される。1カ月で6回買ったこともあった。
萩しーまーとの駅長、山口泉さん(36)らは、この「もち」は、当時江戸で売られていた大福もちのことだと推定した。
費用録には「誘惑に負けてしまい買い食いをしてしまった。この記録を見返すと恥ずかしくがっかりする(大意)」との記述もある。厳しく自身を律した、松陰のストイックさが伝わってくる。
山口さんらは、こうしたエピソードに注目し、松陰のふるさとならではの大福を開発しようと考えた。明治維新150年に向けて、昨年6月ごろから資料収集と開発をスタート。萩しーまーと内の和菓子店「久光製菓所」の久光清美さん(71)がレシピを担当した。
生地には県産もち米を使った。やわらかさを保つため白玉粉や求肥(ぎゅうひ)が使われることが多いが、当時はもち米が使われることが多かったことを踏まえた。蒸してつくことを2回繰り返し、やわらかさを持続させているという。
あんは国産小豆の粒あん。生地50グラムに対し、あんも50グラムと中身たっぷりに仕上げた。生地のかすかな塩味が、あんの甘みを引き立てる。
松陰が残した「至誠にして動かざるは未(いま)だ之(こ)れあらざるなり」などの人生訓と、その解説を記したしおり12種を用意。もち1個に1枚添える。山口さんは「この大福をきっかけに明治維新に関心を持ってもらえたら」と話した。1個150円(税込み)。問い合わせは、萩しーまーと(0838・24・4937)。(林国広)