「長期間の身体拘束は人間の尊厳を奪うものだった」。退院後にうつ病と診断された女性はいまも12種類の薬を処方されている=東京都内、大久保真紀撮影
14歳のときに摂食障害で入院した病院で77日間も不当に身体を拘束されたとして、東京都在住の女性(24)がこの病院に1056万円の損害賠償を求める裁判を17日、東京地裁に起こす。女性は「非人道的な扱いで肉体的・精神的な苦痛を受け、人生を壊された。私のような被害者を出してほしくない」と訴える。
診療録などからまとめた訴状によると、女性はダイエットで生理がなくなったりふらついたりしたため、2008年5月16日に都内の病院の精神科を受診。摂食障害と診断され、19日に女性も同意して入院した。
食事はベッド上でとっていたが、ベッドから離れてはならないと指示され、音楽を聴くことも、外部との電話や面会も許されなかった。病室の簡易トイレで看護師の立ち会いのもとで排泄(はいせつ)していたという。
厳しい行動制限に納得できず、女性は5月24日に抗議のため点滴を自ら抜いた。すると、「治療を拒絶した」などの理由で、本人の同意がなくても保護者の同意で入院できる「医療保護入院」に切り替えられた。帯のような太いひもで両手両足と肩をベッドに縛り付けられたうえ、栄養をとるために鼻からは胃へチューブが、尿道にはカテーテルが入れられ、おむつをされた。入浴もできなかったという。
足の拘束が解かれたのは38日目、すべての拘束が解除されたのは77日目。両親と面会を許されたのは入院から4カ月余りたった9月26日で、医師に強く希望して11月21日に退院した。
退院後は頭痛やめまい、不眠の症状が出たほか、拘束される夢を見て跳び起きたり、フラッシュバックから逃れるためにカッターで腕を自傷したりするなど、精神状態が著しく悪化。別の病院でうつ病と診断された。高校は1年生の5月で中退せざるをえなかったが、15年に結婚してからは安定してきているという。
弁護団の北村聡子弁護士は「自傷や他害の恐れもなく、生命の危険を生じさせるような状況ではなかった摂食障害の14歳の少女に対して、77日間も身体を拘束するのは、あまりにも非人道的。医療行為の範囲を超えている」と話す。
病院側は「提訴前で訴状が届いていないので答えられない」としている。
■10年前の…