中部電力浜岡原発=2018年1月11日午後1時31分、静岡県御前崎市、朝日新聞社機から
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)が運転停止して7年になる14日を前に、朝日新聞静岡総局と静岡大情報学部の中澤高師准教授(社会学)が合同で、県と県内35市町の首長に同原発の再稼働に関するアンケートを行った。再稼働に賛成したのは1町だけで、その際の自治体の事前了解を「県全体」を含む広い範囲で求める声も多く、慎重な姿勢が浮き彫りになった。
3月に行い、県のほか沼津、下田両市を除く33市町から回答があった。原子力規制委員会の安全審査を通過した場合、再稼働に「賛成」としたのは同原発から距離がある県東部の小山町だけ。「反対」は中部電との安全協定の対象となっている同原発から31キロ圏内の島田、藤枝、袋井3市を含む計7市町だった。
県と残る25市町は「その他」としたが、31キロ圏内の磐田、掛川、菊川、牧之原4市と吉田、森2町は「住民の安全・安心の確保が必要」などと付記し、慎重姿勢だった。県は「使用済み核燃料の処理方法が確立されていない。再稼働を考える状況にない」、立地点の御前崎市は「審査中の段階で議論すべきではない」とした。
知事以外で再稼働への事前了解権を認める自治体の範囲について「御前崎市のみ」としたのは同市を含む4市町。御前崎市と、隣接する牧之原、菊川、掛川3市は中部電と結んだ「4市協定」の内容から実質的に事前了解権があるとされるが、この「4市」までにすべきだとしたところはなかった。
さらに範囲を広げて「安全協定を結んでいる31キロ圏内11市町」としたのが10市町に上り、県全体と答えたところも4市町あった。県と15市町は「その他」としたが、県が「31キロ圏内の意見は重要」と答えるなど広範囲の自治体への配慮を求める意見が目立った。
また、再稼働にあたっては14市町が、国が事前了解の範囲や方法を「法制化すべきだ」とした。法制化を求める市町の多くは、国が原発をエネルギー政策として推進してきたことから、合意形成の「ルール化」も国の責任で行う必要があるとの考えを示した。
茨城県東海村で東海第二原発を運営する日本原子力発電は3月、同原発の再稼働や延長運転をする場合、立地自治体だけでなく、30キロ圏の周辺5市の事前了解を必要とする安全協定を新たに結んでいる。(長谷川智、宮廻潤子)
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〈浜岡原発〉 東京電力の原発と同じ沸騰水型。5号機まであるが、1、2号機は2009年1月に運転を終了し、廃炉作業中。東海地震の想定震源域の真上にあり、11年3月の東日本大震災を受けて当時の菅直人首相が停止を要請し、同年5月14日に全炉停止した。中部電力は防波壁建設など安全対策を進め、原子力規制委員会に対して14年2月に4号機、15年6月に3号機の安全審査を申請し、現在審査が続いている。