練習で競り合う原口(左)と酒井高
約2週間後に迫ったサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会を前に、日本代表の西野朗監督(63)の目指す戦い方がようやく見えてきた。ハリルホジッチ前監督が口酸っぱく求めた「縦に速く」から、強調するのは「臨機応変」だ。30日のガーナとの国際親善試合(日産スタジアム、午後7時25分開始)で、その手腕を披露する。
西野監督は、合宿で新たな布陣を試し続けている。
招集した代表メンバー26人がそろって一夜明けた26日、守備の最終ラインをこれまでの「4人」から「3人」に変えて、初めて実戦形式の練習を行った。
これまで代表が採用してきた、4―2―3―1や4―3―3に比べ、中盤に厚みが増し、中央により人が集まる。「中盤の数的優位を生かして崩す」(長谷部)、「点を取りに行くときに、球を保持して攻めに厚みを加えたい」(槙野)。日本の良さとする、コンビネーションでの崩しを生かそうとしている。
選手の配置でも、西野監督は新風を漂わせる。ガーナ戦のメンバーを発表した18日の記者会見で語った「ポリバレント」の言葉が示すように、複数の位置をこなす能力を求める。従来は左FWだった原口を運動量を買って、右の大外に構えるMFで起用。シュートが武器の宇佐美はサイドからより中央に移り、ゴール近くでプレーできる2列目に置くなどする。
宇佐美は「新しいトライで最初は苦労するけど、前向きに言えば伸びしろしかない。たくさん話し合って良くしていきたい」と話す。
実際、短期間で使いものになるかは分からない。3バック最大のデメリットは、両サイドのMFが最終ラインに吸収されて「5バック」になりがちな点。そうなるとゴールまでの距離が遠くなり、前線へのフォローも薄くなる。かえって攻め手を見いだせなくなる可能性もある。
2014年のブラジル大会を指揮したザッケローニ監督も3バックを試みたことがある。ただ攻守に機能する手応えを得られず、最終的には4―2―3―1で戦い抜いた。
急造3バックの危険性もあるが、西野監督は「いろんな形に対応し、布陣も人も変えていかなければいけないのがW杯」と話す。複数の布陣を用い、選手も様々な位置に配せれば、交代策の幅も広がる。4バックでスタートし、DFに代えて攻撃の選手を入れると同時に布陣も変える。そんな手で相手を一時的に混乱させることもできる。状況に応じた戦いができる柔軟なチームを目指す。(藤木健)
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日本サッカー協会は28日、ガーナ戦(30日)に臨む日本代表の背番号を発表した。香川(ドルトムント)が10番、本田(パチューカ)は4番、岡崎(レスター)が9番をつける。