子どもたちに教えながら伝統の踊りを披露する先住民のダンサーたち=18年5月28日、キャンベラの豪州国立博物館、小暮哲夫撮影
オーストラリアの首都特別地域(キャンベラと周辺地域)が、先住民(アボリジナルピープル)との「和解の日」として、28日を初めて休日にした。英国からの入植に始まる歴史を振り返り、先住民を国民として認めた1967年5月27日の国民投票を記念。今年から毎年、27日以降の最初の月曜日を休日にする。
67年の国民投票は、先住民を国勢調査の対象に加える是非を聞き、賛成は90・77%を占めた。先住民に入植以前からの土地の権利を認めた92年6月3日の最高裁判決も記念する。
キャンベラの豪州国立博物館では28日、先住民の文化の理解を深める記念イベントがあった。先住民の集団の一つ、太平洋にあるトレス海峡諸島の先住民たちが伝統の踊りなどを披露した。
抑圧の歴史、共有する狙い
4万~6万年ほど前から豪大陸に住む先住民は、18世紀後半以降、入植者との衝突や持ち込まれた病気で多くの命を失った。1910年ごろから70年代までは政府が先住民の子どもを施設に入れたり、白人家庭に養子に入れたりした。白豪主義のもと、白人に同化させる狙いで、家族から引き離された子どもたちは「盗まれた世代」と呼ばれた。
イベントを訪れたマリア・パシさん(49)は父が最高裁判決の裁判の原告だった。「人々の多くは今も、入植以降に我々が経験してきたことを理解していない。今日は意義ある一歩だ。ヒストリー(歴史)がミステリー(謎)にならなければ、和解できる」と語った。
残る格差、10年短い寿命
だが、格差はまだ残っている。先住民の平均寿命(2010~12年)は、男性が69・1歳、女性が73・7歳と先住民以外の人々に比べて10年ほど短い。16年の先住民の失業率は18・4%で、先住民以外の2・7倍だ。高校を卒業した20~24歳の割合(16年)は65・3%と、06年の47・4%から大きく増えたが、先住民以外の89・1%には及ばない。
イベントを企画した首都特別地域のトレス海峡諸島民団体のサマンサ・フォークナー議長は「先住民と非先住民が理解を深めて協力していけば、格差も克服できるだろう」と期待した。(キャンベラ=小暮哲夫)