ローマの大統領府で5月31日、イタリア首相に指名され、演説するコンテ氏=AP
総選挙後の「政治空白」が続いていたイタリアで、欧州連合(EU)に懐疑的な「五つ星運動」と右派「同盟」の2党による連立政権が発足することになった。マッタレッラ大統領は5月31日夜(日本時間1日未明)、両党の首相候補で、いったん首相指名を返上したフィレンツェ大教授のコンテ氏(53)を、再度首相に指名した。
コンテ氏は再指名を受けた後、閣僚名簿を発表。総選挙で第1党になった新興政党「五つ星運動」のディマイオ党首は、経済開発と労働、社会政策の担当相に就任する。「同盟」のサルビーニ党首は、内務相の就任が決まった。両党首はいずれも副首相を兼任する。
両党による連立政権の組閣を巡っては、経済財政相の人事が問題となった。両党は当初、ユーロ離脱派のサボーナ元産業相を経済財政相候補としたが、大統領が反対。コンテ氏が組閣を断念し、首相指名を返上した経緯がある。指名返上を受け、大統領は次期総選挙までの暫定内閣として、28日に経済学者のコッタレッリ氏を首相に指名。だが国債価格が急落するなど金融市場に大きな影響が出て、同氏も31日に首相指名を辞退した。
再指名を受けたコンテ氏は今回の組閣で、サボーナ氏を経済財政相ではなく欧州担当相とすることで、大統領の承認を取り付けた。コンテ氏は閣僚名簿の発表後、「政策目標を実現するため、精力的に働く。全国民の暮らしの質を向上させる決意だ」と語った。1日午後に大統領府で宣誓式が開かれ、新内閣が発足する。さらに発足から10日以内に、上下両院議会で信任投票される。両党は両院で過半数の議席を得ており、内閣は信任される見通し。
新内閣の樹立で、約3カ月に及ぶ政治空白は解消されるが、両党はともにEUに懐疑的な立場。大幅な所得減税などの歳出拡大策を進めることで合意しており、今後、緊縮財政を求めるEUとの対立が深まりそうだ。(ローマ=河原田慎一)