オープン初日に練習する車いすバスケットの選手たち
パラリンピック競技専門の体育館「日本財団パラアリーナ」が1日、東京都品川区の「船の科学館」敷地内にオープンした。2020年東京パラリンピックへ向け、選手強化の拠点として活用される。
「天井のライトが反射するようなきれいな体育館でラグビーができる。すごいことですよ」。リオデジャネイロ・パラリンピックの車いすラグビーで銅メダルを獲得した池崎大輔(40)は感慨深げだった。
車いすを使うパラ競技は「床に傷がつく」と指摘されるなど、練習場の確保が悩みの種だった。滑り止めとして手に塗る松ヤニが床につくのも嫌がられ、バリアフリーの不備を理由に一般の体育館の利用を断られることも日常茶飯事だ。
地元の北海道では、車で2時間かけて練習に通う日もある。「『専用』って言葉、いいですよね。東京大会でメダルを取って恩返しをしないといけない」
パラ競技に特化した施設のため、様々な障害に配慮した工夫が多く取り込まれている。
段差がないバリアフリーの床はもちろん、車いすで利用できるトレーニング器具も完備。扉や通路もゆったり設計されていて、車輪が「ハの字」で幅が広い競技用の車いすでもストレスなく移動できる。
座って汗を流せる「座シャワー」や、車いすに乗ったまま顔を洗えるように洗面台の形状にまでこだわった。脊椎(せきつい)損傷で汗をかきにくく、体温調整が難しい選手もいるため、通常の体育施設よりも冷房の機能を強化しているという。
床には水分を吸収しにくいワックスを、通常の体育館よりも厚く塗った。傷や変形に強く、タイヤ痕や松ヤニが付着しても専用のクリーナーできれいに落とせるという。日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は「パラスポーツの関係者が待ちに待った専用のアリーナ。画期的で、ありがたい」と話している。(波戸健一)