オーストリアのトマス・ハイノッチ・外務省軍縮・不拡散局長=松尾一郎撮影
核兵器の使用や保持、開発などを禁じる核兵器禁止条約について、オーストリアが9日にも批准を完了することがわかった。欧州の主要国では初で、発効に向けて弾みがつきそうだ。
オーストリアのハイノッチ外務省軍縮・不拡散局長(大使級)が朝日新聞の単独インタビューに応じて明らかにした。
核禁条約は昨年9月に署名が始まり、現在58カ国が署名した。一方で、署名の次の最終ステップである批准はオーストリアを入れても9。発効に必要な50までまだ開きがある。だが、ハイノッチ氏は「どの国でも国内手続きに時間がかかる」と述べ、批准国数は順調に増えているとの見解を示した。
ハイノッチ氏は先例として「(1996年にできた)包括的核実験禁止条約(CTBT)は批准国数が10に達するまで1年以上かかった」と指摘。核禁条約について、「他国の情報を聞く限り、9月には(CTBTの1年後の批准国数を)はるかに超える数の国が批准しているだろう」との見通しを示した。
ハイノッチ氏は現在、スイス・ジュネーブで開かれている核不拡散条約(NPT)の2020年再検討会議に向けた準備委員会に出席している。今回の準備委でも核軍縮の議論は低調なため、「NPTで定めた第6条(核軍縮交渉義務)の完遂には核禁条約が必要だ」と強調し、各国に批准を呼びかけ続ける考えを強調した。(ジュネーブ=松尾一郎)