バイクに挑む土田和歌子=横浜市中区
他競技で実績を残した日本の障害者アスリートが、トライアスロンに続々参戦している。2016年のリオデジャネイロからパラリンピックに採用された新競技。スイム0・75キロ、バイク20キロ、ラン5キロの合計タイムで競うが、選手の出身競技はさまざまだ。各国が強化に本腰を入れ始めるなか、日本勢も上位をうかがうが、20年東京大会の実施クラスは未定。有力選手が出場できない事態もありうる?
今月12日、横浜市の山下公園周辺であった世界シリーズ横浜大会。パラトライアスロンは、午前6時55分スタートにもかかわらず、多くの観客がスタート地点で声援を送った。
「たくさんの人に応援をもらって、本当に力になりました」
三つのパラ「金」保持者
女子座位で2連覇した土田和歌子(八千代工業)は、すがすがしい表情で話した。からだ作りの一環で出場した昨年に引き続き、本格転向後の大会で力を示した。世界の車いすマラソンのタイトルを総なめにしてきた「レジェンド」で、冬季アイススレッジスピードレースと車いす陸上5000メートルで三つのパラリンピック金メダルを持つ。
女子座位の出場は7人。苦手のスイムでトップから6分近く遅れる6位スタートも、車いすマラソンの第一人者で鳴らした走力は別格だ。ハンドバイクを用いたバイク、競技用車いすでのランはいずれもトップタイムで、逆転に成功した。
正式な競技転向は今年1月。スイムでは、低水温で過呼吸になることもあるが、「ひとつずつ課題をクリアしていけるのが、この競技のだいご味。自分を表現できる競技の一つ」と転向の理由を語る。
男子では平昌冬季大会のバイアスロンに出場した38歳の佐藤圭一(エイベックス)が、スキーのトレーニングも兼ねて夏と冬の「二刀流」に挑戦した。横浜大会では、四肢欠損など軽度障害のあるクラスPTS5(運動機能障害)で5位だった。海外のトップ選手では30代後半~40代の選手もいて、息長く活躍できることも、この競技の魅力のようだ。
12年からパラ対策チームで強化を担う日本トライアスロン連合の富川理充チームリーダーは「ようやく、各種目で戦える選手がそろってきた」という。
クラスの内訳決まらず
ただ、心配なこともある。20年東京パラリンピックで実施される男女4クラスずつの内訳がまだ決まっていないからだ。
陸上の走り幅跳びからトライアスロンに転向した谷真海(サントリー)は、昨年の世界選手権で優勝した実力者。ただ、出場するクラスのPTS4(運動機能障害)は競技人口が少なく、2連覇した横浜大会の出場者は3人だけだった。
国際パラリンピック委員会(IPC)は遅くとも年内に実施クラスを発表するとしているが、競技人口が少ないクラスは選ばれない可能性があるという。
日本トライアスロン連合の関係者は「日本選手が活躍すれば大会が盛り上がる。有力選手がいるクラスはなんとか入ってほしいんですが……」と話す。(照屋健)