目隠しをして戦う健常者(左)と全盲の男性。この試合は全盲の男性が制した=2018年6月、宮崎市阿波岐原町
目隠しをしたまま「スポーツチャンバラ」を行う新競技を、宮崎市在住の2人が考案した。視覚障害者と健常者が一緒に楽しめる競技で、考案者たちは「いつかはパラリンピックの種目に」と夢をふくらませる。
6月初旬、宮崎市の公民館で男性2人が相対していた。手には長さ約60センチのゴム製の剣、目にはアイマスク。審判が「はじめっ」と告げると、剣を前方に突き出し、静寂の中をゆっくり前に進む。剣がふれあうと、猛烈な速さで互いに剣を上下左右に振り始めた。何も見えない状態で戦う新競技「ZATO1(ザトーイチ)」だ。
試合時間は3分で、コートは4メートル四方。足裏の感触でコートの境目が分かるよう、編みひもで仕切られている。健常者も障害者もアイマスクで目を覆って視界をふさぎ、相手の胸元につけられたボールを剣で突いて落とせば「一本(いっぽん)」。2本先取で勝ちとなる。
場外に両足が出たり、剣を落としたりすると減点。減点2で相手に一本が入る。ボールの中に入っている鈴の音、相手の息づかいや足音など、わずかな気配を捉えて剣を振り合う。
考えたのは宮崎市に住む上田将悟さん(36)と戸越正路(とごえまさみ)さん(33)。マッサージ師として働く上田さんは、脳性まひや脳梗塞(こうそく)などで体に障害がある人を対象に訪問治療をしている。その中で「障害者でも運動をしたい」「ジムには入会を断られた」という声を聞いた。
「健常者と障害者が一緒に楽しめるスポーツはないか」。上田さんの思いに賛同した戸越さんと一緒に、新競技を模索した。できるだけポップに楽しめるものがいい――。そう考えた戸越さんは、ゴム製の剣を竹刀代わりにして戦う「スポーツチャンバラ」に目を付けた。「目隠しをすることで新たな競技性が生まれるのでは」。競技名は盲目の剣士を描いた時代劇「座頭市」に、格闘技大会の「K―1」や自動車レースの「F1」を組み合わせた。
昨年、クラウドファンディング…