北朝鮮の主な核関連施設
12日の米朝首脳会談で最大の焦点は、米国本土をも射程にとらえる核ミサイルを持った北朝鮮の非核化だ。仮に非核化が宣言されても、本当に核を廃棄したかの検証は難しいとの見方が強い。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」をどう具体的に実現するかが課題になる。
無数の施設 非核化の壁
北朝鮮憲法の序文には「核保有国」と明記されている。いったん核兵器を持った国を、どうすれば非核化できるのか。
国際原子力機関(IAEA)などによる検証活動「査察」が不可欠となる。核関連施設やその活動を把握したうえで、平和目的以外の核利用をやめさせる方法だ。
IAEAの査察は3段階。施設を申告させ、場所を明らかにする特定査察▽施設に監視カメラなどを付け、平和目的かを定期的に監視する通常査察▽監視によって疑惑が浮上した場合に行う特別査察だ。
第1次核危機で北朝鮮は、最初の特定査察の段階で申告していない施設があると指摘された。これに対し、軍事施設は対象外だと反論。疑惑は深まった。
北朝鮮には無数の地下施設があるといわれる。このため今回、米朝首脳会談で非核化する方針が示されたとしても、すべての核施設を確認することすら難しいという見方が多い。
査察で確認できた核兵器は、北朝鮮国内で解体する方法もあるが、それより確実で速い方法が国外への搬出だ。リビアの核廃棄では核関連装置が米国に運び出された。今回の米朝の水面下の協議でも、米国は核兵器を国外に運び出すよう求めているといわれる。
弾道ミサイル 米を射程
「もう少し手前で落ちていたらもっと危険だった」
北朝鮮のミサイル発射を受け、朝日新聞の社会面に航空会社関係者の驚きが載った。ただ、これは昨年2回にわたって北海道上空を越えた時のものではない。98年8月31日の「テポドン」(射程1500キロ以上)発射翌日の紙面だ。
93年5月には日本方向へ「ノドン」(射程1300キロ)が発射されていたが、テポドンは明確に列島を飛び越え、衝撃を与えた。
北朝鮮は、核兵器の開発と並行して弾道ミサイルの開発を進めた。核弾頭だけを持っていても使い物にならない。敵地まで届く運搬手段、つまりミサイルと結びついて初めて脅威となる。その照準は日本よりさらに遠い、太平洋の向こうの米国が最終目標だった。
ミサイル開発に乗り出したのは70年代半ば。第4次中東戦争に空軍を派兵した見返りに、ソ連製の短距離弾道ミサイル「スカッドB」(射程300キロ)を受け取り、解体して研究に取り組んだ。80年代半ばには製造を始め、中東諸国に製品や関連技術として輸出。外貨の稼ぎ頭ともなった。
90年代にノドン、テポドンと射程を伸ばしたミサイルの性能は、2011年12月の正恩氏の権力継承後、さらに上がっていく。
17年7月。米国の首都ワシントンも射程に収めるとみられる大陸間弾道ミサイル「火星(ファソン)14」(射程1万3千キロ以上)の試射に成功。11月に同レベルの射程の「火星15」も発射した。ただ、ミサイルに搭載する核弾頭が、大気圏に再突入した後も燃え尽きないようにする技術は開発途上とみられている。(ソウル=武田肇)