2009年の世界選手権男子ダブルス表彰式で、銅メダルを手に笑顔を見せる岸川聖也(左)と水谷隼
卓球の日本男子のエース・水谷隼(29)=木下グループ=と、かつてドイツで武者修行をした仲間たちが10月開幕の新リーグ「Tリーグ」で相まみえる。「初代王者は譲らない」。ライバルであり、友でもある水谷に対抗心を燃やす。
「絶対に『打倒、木下』です」。15日、さいたま市を本拠に置く「T.T彩(さい)たま」の監督兼執行役員に就任した坂本竜介氏(33)と、選手兼コーチになった岸川聖也(31)は、記者会見で力を込めた。
Tリーグには、男女4チームずつが参戦。1チームの選手は6人以上と決められている。男子で豊富な戦力を誇るのが、木下グループだ。水谷と張本智和(エリートアカデミー)の二枚看板を含め、世界団体選手権の日本代表5選手中4選手が所属する。だが「1強は面白くない」と坂本監督は語る。
坂本監督、岸川、水谷は、日本が低迷していた2000年代初頭、日本卓球協会の強化策の一環で、ドイツ・デュッセルドルフで武者修行。岸川は水谷とダブルスを組み、09年と13年の世界選手権で銅メダルを獲得するなど、日本復活の礎を築いた。3人はいまも、互いを認め合う仲間同士だ。
20年東京五輪に向けた日本卓球界のさらなる選手強化のためにも、Tリーグの活性化は重要だ。岸川は「(T.T彩たまが)木下のライバルになれば、隼にとっても間違いなく良いことになる」と語る。
坂本監督は世界各地に足を運び、香港のエースの黄鎮廷(最高世界ランク6位)、今年の世界団体選手権で銅メダルを獲得した韓国の鄭栄植(同7位)、ポルトガルのチアゴ・アポロニア(同13位)ら有力選手の獲得に成功。チームには、16年リオデジャネイロ五輪団体銀メダルの吉村真晴(名古屋ダイハツ)もおり、坂本監督は「木下に対抗できる国際色豊かなチームになった」と語る。
男子のリーグは10月24日に国技館(東京・両国)で開幕するが、カードはまだ発表されていない。「当然、(開幕戦は)うちと木下でしょう」と坂本監督は自信満々だ。
自信には、理由がある。世界団体選手権の準々決勝で、日本は韓国と対戦。張本と水谷は、ともに鄭栄植に敗れて6大会ぶりにメダルを逃した。開幕戦での再戦を「ファンも一番、望んでいる」と坂本監督は話す。(前田大輔)