無償化に伴う施設整備計画の一環で、待機児童数が多い地区に開園した認定こども園。今年4月の開園と同時に、90人の定員がほぼ埋まった=兵庫県明石市、中井なつみ撮影
今年4月時点の待機児童数について朝日新聞が調査したところ、前年比で3割減る一方、2019年10月から始まる幼児教育・保育の無償化で、今後「保育ニーズが増える」と答えた自治体が8割を超えることがわかった。実際、16年度から独自に無償化を先行させた兵庫県明石市では、待機児童が急増し、調査対象の自治体では全国最多に。今後、各地で問題が深刻化する可能性がある。
国の無償化を先取りした明石市だが、保護者の間には不満も残る。
「無償化しても、希望者全員が入れなくては不公平感が強まるだけ」。今年4月、長女(1)が待機児童になった同市の看護師の女性(41)は憤る。無償化で保育所に預けたい保護者が増えたが、保育所の整備が追いつかないからだ。
長女は認可園に落選。その後、必死に認可外の施設を探したが、ようやく見つけた園は保育料が希望していた認可園より高額になる。「働いても保育料がかさむ。無償化は負担増でしかなかった」と肩を落とす。
同市は16年度から、所得制限を設けず、第2子以降の保育料無償化(0~5歳児対象)を独自に開始。入所希望者が予測を大きく上回った。対策に手をこまぬいていたわけではなく、無償化による保育所へのニーズ増をにらんで無償化前の約3倍にあたる約15億円をかけて保育所を整備。17年4月、約800人分定員を増やした。だが、泉房穂(ふさほ)市長は「ニーズ増の試算はしたものの、子育て世帯からの反響が想定以上に大きかった」と話す。
18年4月には、新たに約900人分の定員を確保したが、入所希望者は17年をさらに664人上回る7149人に。開園が延期になる園もあり、最終的に待機児童数は前年を39人上回る586人で全国最多になった。同市待機児童緊急対策室の担当者は「国の無償化と対象年齢などが異なるので単純比較はできないが、明石市が直面していることが全国に広がる可能性は否めない」と話す。
朝日新聞は5月、20政令指定…