外国人技能実習制度に昨年11月に追加された介護職種で、監督機関「外国人技能実習機構」が初めて実習生の受け入れを認定した。第1号は中国人女性2人で、手続きが順調に進めば6月にも入国する見通しだ。日本の多くの介護施設は人手不足にあえいでおり、今後、中国や東南アジア各国からの介護実習生の受け入れが加速しそうだ。
介護の人材が足りない ロボット活用、海外に着目も
認定は5月1日付。受け入れ窓口の監理団体で1カ月間の研修を受けた後、宮崎県延岡市の「メープルウェルフェアーサービス」が運営するグループホームと、介護付き有料老人ホームで働く。現制度では来日後1年以内に、日本語能力試験N3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベル)に受かれば、最長5年働ける。不合格なら帰国となる。
同社の小野真介社長(39)は「将来の中国での事業展開を見据えて受け入れた。中国事業の幹部になってほしい」と話す。
国内の介護人材不足は深刻だ。厚生労働省の推計では2025年に38万人不足するとされ、政府は外国人の受け入れを進めてきた。しかし、08年に始まった経済連携協定での受け入れでは間に合わず、技能実習生の活用に踏み切った。技能実習は就労目的の制度ではないが、農業や建設業などの人手不足の分野で今も約26万人が働いている。介護は初の対人サービスとなる。
一方、介護実習生の第1号を送り出す中国は介護人材の育成を迫られている。
中国の65歳以上人口は17年末時点で全体の11・4%を占め、国連の予測では、50年には26・3%まで増える。特に、一人っ子政策が厳格に適用されてきた都市部では、高齢化が急速に進み、独居老人や老いた親の介護者不在が深刻な社会問題となっている。
日本に派遣する介護実習生を養成している中国の企業は「社会や介護のプロが老人の暮らしを支援する仕組みの構築が必要で、介護先進国である日本の現場で多くの中国人が学ぶことは、未来の中国にとって有益だ」と話す。(松川希実、上海=宮嶋加菜子)