倒れた小学校のブロック塀のイメージ
最大震度6弱の地震から3日目を迎えた大阪府北部の被災地では大雨が降り、住民たちは雨漏りの対応に追われた。通学途中に学校のブロック塀の下敷きになって亡くなった女児の通夜が営まれる一方、ブロック塀に構造的な問題があったことも明らかになった。
ブロック塀、鉄筋の長さも不足
大阪府高槻市の寿栄(じゅえい)小学校でプールのブロック塀が倒れ、登校中だった4年生の三宅璃奈(りな)さん(9)が亡くなった事故で、この塀の基礎部分とブロック部分をつなぐ鉄筋の長さが短く、塀の上端まで届いていなかったことがわかった。文部科学省の依頼で調べた大阪大大学院の真田靖士准教授(コンクリート系構造学)は、接続部分の弱い構造が倒壊の原因になった可能性があると指摘する。
真田さんによると、塀は基礎部分(高さ1・9メートル)の上に、8段のブロック部分(1・6メートル)を積んだ構造。現在の建築基準法施行令では、基礎部分からブロック部分の上端までをつなげる鉄筋が必要となる。
塀には太さ1・3センチの鉄筋約50本が約80センチ間隔で埋め込まれていた。だが、鉄筋の長さは計33センチで、基礎部分に13センチ、ブロック部分に20センチしかなく、上端に届いていなかった。
さらにこの鉄筋とは別に、ブロック部分には縦と横に40センチ間隔で鉄筋が入っていた。このため、ブロックはばらばらにならず、つながった「壁」の状態で倒れたとみられるという。
塀は高さが基準の上限を超えていて、後ろから補強する「控え壁」もなかった。真田さんは「接続部の構造が弱かったことも、倒壊に影響しただろう」と述べた。
高槻市内の葬儀場では20日、三宅さんの通夜が営まれた。参列した浜田剛史市長は取材に応じ、「本当に申し訳ないということを何度もご本人に申し上げた」と話した。通夜の前に三宅さんの両親に会い、直接謝罪したことも明らかにした。市長が「この度のことは市に責任がある。大変申し訳ありませんでした」と頭を下げると、「今は何も考えることができない」との返答だったという。
住民らブルーシート求める
関西地方が大雨に見舞われたのは、九州方面から延びてきた梅雨前線が活発になった影響だ。気象庁によると、20日午後9時までの24時間降水量は和歌山県田辺市で6月の観測史上最大となる314・5ミリを記録したほか、大阪府の河内長野市で99・5ミリ、熊取町で88・5ミリなどとなった。
大阪北部地震で被災した家屋の少なくない大阪府高槻市や茨木市では、自治体窓口や復旧作業を担う業者のもとに、雨をしのぐブルーシートを求める住民が後を絶たない。
「崩れた屋根やひびの入った壁を覆うため、ブルーシートをかけてほしい」
高槻市内で工務店を営む藤本幸男さん(66)は、高齢の住民らからこんな依頼を受け続けている。20日午後までに数十件になった。「電話がひっきりなしにかかってくる。雨が強くなってきて屋根にのぼる作業は大変だ」と話す。
同市の清掃業、香山寿克さん(73)は、業者に頼まず、自力でブルーシートを屋根にかぶせた。命綱を使い2階建ての屋根の上にのぼり、シートを固定した。「雨が降ると聞いていたので、早く処置したかった」
一方、同市の居酒屋店主吉田靖士郎さん(76)は「店のボトルが全て割れた。今朝雨漏りが始まり、昼ごろに天井がはがれ落ちた。ブルーシートを借りても自分で張れず、誰に頼んでいいかもわからない」と声を落とした。
高槻市は、19日から降り始めた雨に備え、国土交通省や民間企業の協力を得て、20日午後3時時点で約3750枚を配布。隣の茨木市は20日夜までに、1113人に3117枚配った。
地震に便乗した詐欺に注意
大阪府北部を震源とする地震に便乗した詐欺に注意するよう、大阪府警が呼びかけている。東日本大震災や熊本地震では被災した家屋のリフォームや義援金を装った手口で被害が出ており、「不審に思ったら、警察や役所に相談してほしい」としている。
捜査2課によると、災害時に多発するのは、役所の職員などをかたって募金を求める義援金詐欺▽家屋の無料点検を装って不要な工事を勧めるリフォーム詐欺▽被災した人にお金が返ってくるとだます還付金詐欺――など。20日現在で被害は確認されていないが、府警は被災地域の高齢者宅を戸別訪問するなどして警戒している。