「終活」を考える
高齢になり、先祖代々からのお墓の管理が負担になってきました。子どもも離れて住んでいるため、今後お墓をどうすればよいか迷っています。
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核家族化、少子化で先祖代々の墓を次の世代に継がせるのが難しい人が増えてきました。お墓の種類も選択肢もさまざまで、供養の在り方も変化しつつあります。
都内在住の70代女性のHさんは、最近亡くなった夫の遺骨を、高知県の寺にある夫の先祖代々からの墓に納骨すべきか迷っています。納骨してもお参りが大変で、娘は北海道に嫁いでいるため、将来墓を守るのも難しいからです。夫婦の遺骨は住み慣れた都内で永代供養の墓にした方がいいかと思い始めました。そうなると、高知にある墓が問題になります。
今ある墓をどうしようかと考えている人は多くいます。墓を継ぐ祭祀(さいし)承継者がいない、あるいは継ぐ人がいてもあえて継がせないという人たちです。
Hさんの場合は主に四つの選択肢があります。①高知の親戚に墓を守ってもらう②今の墓のまま永代供養してもらう③高知の寺にある永代供養墓に移す④高知から都内に改葬(遺骨を移転)する方法です。
高知の親戚に今の墓を守ってもらう場合、親戚が今後負担する費用も含めてお願いすることになり、了承してくれればそれが一番よい方法です。
今の高知にある墓のまま永代供養してもらう場合、そこで永久に供養してくれるものではありません。一定期間供養をしてもらった後、別の永代供養墓へ移し、墓所を更地にしてもらうことになります。寺が行うケースのほか、「お墓のみとり」として第三者と死後事務委任契約を結んで行ってもらう方法もあります。永代供養というのは一定期間の供養のため、供養期間や期間経過後の扱いについては、お寺などへ確認が必要です。
高知の寺の永代供養墓に移す場合は、永代供養墓に遺骨を移して、今ある墓所を更地にします。
高知から都内へ改葬する場合は、今墓がある市で改葬許可申請書をもらい、それに寺の署名などをしてもらったのち同市から改葬許可証をもらいます。今まで供養して墓を守ってくれた寺への配慮をしながら進めましょう。
遺骨の移転先は、寺院墓地や霊園へのお墓建立、合祀(ごうし)墓への納骨、納骨堂(建物内の棚やロッカーに遺骨を預ける)や堂内墓(参拝場所へ納骨箱が自動搬送される)、樹木葬(樹木に囲まれた墓地に納骨する)、散骨(海などへまく)、手元供養(遺骨を自宅で供養したりネックレスなどに加工したりする)などがあります。
費用はケースによりますが、移転するときに閉眼供養(魂抜き)や墓所を更地にする費用がかかります。移転先での墓建立費、開眼供養(魂入れ)や納骨供養、年間管理料、場合により永代供養料などもかかります。
永代供養墓はお参りに行かなくてよい墓と勘違いしている人がいます。散骨すればお墓が不要で、後継ぎ問題はなくなると思っている人もいます。しかしそんなことはありません。
亡くなった後、供養する人の気持ちを考えたうえで、お墓や供養をどうするのか決めるのが大事です。供養しなくて悔やむ人はいても、供養をして悔やむ人はいないからです。(相続・終活コンサルタント 明石久美)