ラオックスの羅怡文社長
家電量販店のラオックスが、経営難から中国の家電量販大手、蘇寧電器(現蘇寧易購集団)に傘下入りして約10年。訪日外国人が家電製品などを大量購入する「爆買い」の恩恵を受け、再建を果たしました。ブームが一段落した今、羅怡文社長(55)に今後の展開を聞きました。
――2009年の蘇寧傘下入り以降、免税事業を手広く手掛けていますが、日本人相手にはどのように展開していくのでしょうか。
「確かに免税事業は外国人相手だが、あと5年もしたら、日本人や外国人という区別は意味がなくなる。所得の格差でマーケットが分かれる時代がやってくる。例えばニューヨークやパリで、人種や国籍によってマーケットが決まっているだろうか。ニューヨークやパリのような『グローバルライフスタイル』にあこがれる人のために新たなファッションや飲食、エンターテインメントを提案していく。東京五輪で日本人は意識も含めてさらにグローバル化する。特に日本の女性たちは、海外から来た華やかなファッションの女性たちにあこがれ、まねしたいと思うだろう。そこを見据えた事業展開を考えている」
――具体的には。
「婦人靴の『モード・エ・ジャコモ』など3社を買収した。従来通り百貨店での販売のほか、ネット通販にも力を入れていく」
「日本製の靴は、質はいいが、どちらかというと地味で画一的。価格も1万~2万円で非常に狭い幅で勝負している。もっと安いものや高いものがあっていい。10万円もするのに売れるイタリアの靴のように、個性的な商品の企画製造を進め、20年には婦人靴事業を現在の3倍の300億円に引き上げたい」
――業績不振だったギフト販売のシャディも4月末に子会社化しました。狙いは。
「同社が手掛けるカタログ販売と店舗販売は一見古いビジネスだが、全国3千店の店舗網と物流網がある。ネットビジネスの誰もがほしがるものが一気に手に入った。百貨店閉鎖などで高品質な商品がすぐに買えない人たち向けの新たな事業を検討している」
――メインの免税事業はどうしますか。
「全国40店舗で600億円を売り上げる免税は、揺るぎのない中核事業だ。将来も成長するとみている。ただ、免税だけに頼っていてはよくない。婦人靴事業やシャディの買収で収益の柱を多様化していく。買収で企業規模も大きくなり、今期の売り上げは前期より2倍近くの1200億円の見通しだ。構造改革のめどもたち、営業利益は7倍の10億円を見込んでいる」(聞き手・佐藤亜季)
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〈ら・いぶん〉 1963年生まれ。中国・上海市出身。上海の大学を卒業後、89年に来日し、92年に在日中国人向け新聞を創刊した。2006年に上海新天地(現日本観光免税)を設立し、同社社長に。09年、蘇寧電器と日本観光免税が共同でラオックスに出資し、ラオックス社長に就任した。