スタンドから選手に声援を送る加古川東の岩本葉月さん=高砂
第100回全国高校野球選手権記念東・西兵庫大会は17日、6球場で12試合があった。昨年の兵庫大会を制した神戸国際大付が初戦を突破し、準優勝だった明石商も次戦に駒を進めた。6年ぶりに夏の勝利を挙げた和田山は3勝には届かなかった。
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「勝つ」約束 信じ声援 加古川東・岩本葉月マネジャー
(17日、高校野球西兵庫大会 加古川東6―3相生産)
「野球部のマネジャーになってくれへん?」。加古川東の岩本葉月(3年)は入学直後、書道の授業中に佐伯将輝(しょうき)(同、現主将)から声をかけられた。高校野球観戦は好きだが、吹奏楽部に入るつもりだった。きれいな字を見込まれたのか、急な誘いに驚いた。
でも、見学に赴いた野球部のアットホームな雰囲気が気に入った。入部して既に2年あまりがたつ。
「夏」を占う春季県大会を控えた今年4月中旬の夜、交通事故に遭って上あごを骨折した。思わぬ入院生活。県大会初戦の日は刻々迫り、気持ちは焦った。
県大会の初戦前日、佐伯ら3年生全員が病院へお見舞いに来た。「明日の試合のオーダー表を清書してくれないか」と頼まれ、下書きを渡された。ふと見ると、高野智之監督の字でこんな書き込みがあった。「お前のために勝つから」
監督からこんな言葉をもらったことはない。涙が止まらなかった。
翌日、約束は果たされた。岩本には試合のウィニングボールが手渡された。退院後、体力低下に悩んだ岩本はこのボールを眺めて自分を奮い立たせた。
相生産との今試合、岩本はスタンドで声援を送った。試合前、佐伯は岩本らマネジャーに「絶対勝つ」と宣言。延長十回表1死一塁、打席に入った佐伯は打撃のサインに反して、とっさの機転でバントに打って出た。守りの薄い三塁線にボールが転がったのを見て、一塁へ必死の走塁。気迫が相手の暴投を誘い、その間に走者は二、三塁へ。その後の得点につなげた。
試合は6―3で勝利。「勝つ」の約束は再び実現した。「こんなすてきな世界に連れてきてくれた将輝に感謝しています」と岩本はいう。佐伯が本当はなぜ自分を勧誘したのか、尋ねたことはない。(山崎毅朗)