サーブを出す岩渕幸洋=高知県民体育館
卓球の2020年東京パラリンピックのメダル候補、岩渕幸洋(こうよう)(23)が障害者のパラ選手として初めて、健常者の日本リーグを戦った。
5月末から6月初めにかけて高知県であった日本リーグ。所属する協和発酵キリンの一員として団体戦4試合にシングルスで出場した。1試合を除き大差で敗れたが「チャンスをもらった。ありがたいこと。自分は何ができるのか、はっきりさせるために重要だった」。
信念がある。「人間、できることとできないことがある。それが僕の場合は生まれた時から明確だった。できることで勝負する」。武器は相手の弱点をしつこく突く粘り。2ゲームを奪って勝利に近づいた試合もあり、手応えは感じた。
生まれた時から左足はねじれ、両足とも内側に曲がっている。それでも小学校時代はスキーやゴルフを楽しんだが、中1から始めた卓球は勝手が違った。特に左右の動きが多い競技で、球を散らされると難しい。中学時代の健常者の試合では地区大会止まりだった。
どうやって勝つか。ビデオで分析し、反射神経と動体視力にかけた。左右に動かされると不利なので、台に体を近づけ、早いタイミングで打ち返す。ラケットの裏面に、細かい突起があるラバーを貼り、球の回転に不規則な変化をつけた。スピードは出ないが、「真っ向、でなくても勝負はできる」と思った。
しつこく拾って相手のペースを乱せれば勝機が出てくる。楽しくなってきた。高校では東京都大会ベスト32。パラ卓球でも早大時代の14年にアジアパラ選手権銅メダル。16年リオパラリンピックに出た。
スポーツはきれいごとだけではないと思う。パラ卓球では相手の歩き方、ラケットの持ち方で弱点がわかる。「そこを攻めるのがセオリー。健常者でもトップレベルは相手の弱点を見抜いてそこを突く。そこは同じだと、日本リーグの経験で改めてわかりました」
お互い、相手の弱点を徹底的に分析して攻める。できることをやり尽くした先に達成感と理解が生まれる。2年後、東京でそんな思いを極めたい。(有田憲一)