史上最年少でXゲームズのスノーボードビッグエアを制した村瀬心椛
4年後の北京冬季五輪に向けて、スノーボード界にさっそく新星が現れた。村瀬心椛(ここも)(13)。5月にノルウェー・オスロで開かれた冬季競技の世界最高峰のプロ大会「Xゲームズ」で女子ビッグエアを制した。この大会の冬季種目史上最年少王者となり、世界を驚かせた。
153センチの小さな体で決めたのは、女子では世界初のジャンプだった。
Xゲームズ初出場ながら、「あんまり緊張しませんでした」。2回目のジャンプで、女子では世界で数人しかできない「バックサイド(BS)ダブルコーク1080」(縦2回転、横3回転)を成功。すると、最後の3回目はさらにギアを上げた。
挑んだのは、「BSダブルコーク1260」(縦2回転、横3回転半)だった。着地がやや乱れて両手がわずかに雪面をかすったが、持ちこたえた。49・66点の最高得点をたたき出して、優勝。平昌五輪4位の岩渕麗楽(れいら)(キララクエストク)はもちろん、金メダルのアンナ・ガサー(オーストリア)までねじ伏せた。「100%を出せた。自信はありました」
岐阜市出身。スノボを始めたのは4歳の時だ。県内のスキー場で雪だるまを作りながら見つめた自営業の父・功一さん(41)の滑りに憧れた。「カッコ良くて、やりたいって思ったんです」。ただ、しばらくは年に数回滑るだけ。本気になったのは小学1年からだった。
自宅近くの室内スキー場の子どもキャンプに参加した時に見た年上の子たちのジャンプが負けず嫌いに火をつけた。まだ満足に滑れなかったが、「私も絶対に飛びたいって」。
以降は、自宅から車で約15分の室内練習場に週1回通って技を磨き、週末は片道4時間半かけて富山県内にある巨大エアマットの練習施設へ。その合間に筋トレや自宅のトランポリン、スケートボードで感覚を養ってきた。
「BSダブルコーク1260」をマスターしたのは昨夏の富山だった。「3回転(1080)を飛ぼうとしたら、回り過ぎて3回転半(1260)になっちゃった」と振り返る。
誰もが驚くセンスの持ち主だが、スノボから離れれば、体育の時間と、米国の女性歌手アリアナ・グランデが好きな普通の中学2年生だ。「遠征が多くて寂しいけど、友達とおしゃべりできるから学校に行くのが楽しい」。ただ、夏休みはニュージーランドや豪州で大会と練習の日程がすでにぎっしり詰まっている。
目指すのは、北京五輪の金メダル。自信を問うと、「『無理』なんて言ってしまったら、そこで終わり。無理って思ったら絶対にいけないって、私は決めています」。Xゲームズ優勝にも、慢心はしていない。「世界一にはなったけど、『まだ世界一なんかじゃない』って集中しないと。4年後、家族に金メダルをかけてあげたいから」(吉永岳央)
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〈ビッグエア〉 ノルディックスキーのジャンプ台を一回り小さくしたような「キッカー」と呼ばれる高さ30~40メートル、斜度20度以上の台から飛び、空中で演技する種目。スキージャンプは飛距離と飛型点を競うが、ビッグエアは空中で見せる回転技の難度や完成度で争う。五輪では、今年2月の平昌大会から正式種目となった。