(20日、大相撲名古屋場所)
大きな、大きな1勝だ。御嶽海が格上を破り、初優勝にぐっと近づいた。
豪栄道が間合いを嫌った後の2度目の立ち合い。カド番を脱し、調子を上げてきた大関のぶちかましを、右肩で受ける。押される。だが、ここからの反応がいいのが今場所の御嶽海だ。
「相手がよく見えていた」。体を左に開いて上手を取ると、相手の勢いを借りて、土俵外へ一押し。万雷の拍手を浴びた。
前日、高安に屈して連勝が11で止まった。今年初場所は初日から7連勝の後、5連敗。続く春も、5勝2敗の中日から5連敗。ひとつの黒星から一気に崩れるもろさがこれまであった。
前夜、痛恨の高安戦を映像であえて見返した。これまでは、自分が負けた相撲は見なかったのに、だ。
「仮面ライダー、ウルトラマンを見るのと一緒。勝つから見る。自分が格好いい取組を見たいから」
だから、敗れた自分を見るのは新鮮だった。「興奮もしていたし、冷静でもあった」。「大関は余裕を持っている」とも感じた。自分との差もよく見えた。
黒星と向き合い、気持ちを切り替えられたかは「分からない」という。ただ、何かを変えようとした行動で、結果に結びつけたのは事実だ。
場所は大詰め。残り2日で1勝すれば、誰も追いつけない。「ここまで来れば、気持ち。自分の相撲をしっかり取れば、行けるんじゃないかと思う」
千秋楽に持ち越すつもりはない。(鈴木健輔)